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文献詳細

雑誌文献

胃と腸31巻7号

1996年06月発行

文献概要

今月の主題 遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC) 主題症例

多発微小大腸腫瘍性病変を認めた遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)の2例―実体顕微鏡による検索

著者: 多田修治12 飯田三雄13 檜沢一興1 八尾隆史4 青柳邦彦1 藤島正敏1

所属機関: 1九州大学医学部第2内科 2現 済生会熊本病院消化器科 3現 川崎医科大学内科(消化器Ⅱ) 4九州大学医学部第2病理

ページ範囲:P.889 - P.897

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要旨 遺伝性非ポリポーシス大腸癌と考えられた多発大腸癌の2例を報告した.〔症例1〕は80歳の女性で,長女と次男が大腸癌に罹患していた.74歳時に横行結腸の2型進行癌,78歳時に直腸S状部に2型進行癌とⅡa型sm癌の治療を受けていた.経過観察のための大腸X線・内視鏡検査で,下部直腸と肝彎曲部に2型進行癌を,他の部位にも表面隆起型早期癌の多発を認め,大腸全摘術が行われた.〔症例2〕は80歳の女性で,姉が49歳時に大腸癌の切除を受けていた.貧血のため大腸検査を行ったところ,上行結腸と下行結腸に進行癌を,横行結腸にⅡa型の早期癌を認め,結腸亜全摘を行った.2例の全切除標本を実体顕微鏡を用いて詳細な組織学的検索を行ったところ,〔症例1〕からは合計31個の癌巣(進行癌4個,sm癌4個,m癌23個)と3個の腺腫が,〔症例2〕では3個の進行癌と1個のm癌,23個の腺腫が発見された.2例とも右側結腸に腫瘍の頻度が高かった.5mm以下の微小病変では,〔症例2〕の腺腫は半球状隆起を示したが,〔症例1〕のm癌の多くが高低差のない平旭な形態であった.HNPCC患者の大腸検査では,平坦な微小腫瘍の存在を考慮した全大腸の観察が必要と考えられた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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