今月の主題 Helicobacter Pyloriと胃リンパ腫
主題
非腫瘍性胃RLHと胃MALTリンパ腫の経過観察例の検討―Helicobacter pyloriとの関連を中心に
著者:
末兼浩史1
飯田三雄2
中村昌太郎13
八尾隆史3
岩下明徳4
檜沢一興1
吉村龍司1
青柳邦彦1
藤島正敏1
所属機関:
1九州大学医学部第2内科
2川崎医科大学内科(消化器Ⅱ)
3九州大学医学部第2病理
4福岡大学筑紫病院病理
ページ範囲:P.973 - P.986
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要旨 長期にわたる経過観察の結果,低悪性度胃MALTリンパ腫と診断された8例(観察期間1~10年,初回検査時7例でH.Pylori陽性)と,経過観察中の非腫瘍性胃RLH7例(観察期間1~8年,初回検査時全例H.Pylori陽性)を対象とし,経過中のX線,内視鏡像と生検標本上のリンパ腫病変の変化およびH.Pyloriの菌体量の変化を比較検討した.両群間で観察期間に差はなかったが,低悪性度MALTリンパ腫群のほうが若年で男性が多い傾向を認めた.低悪性度MALTリンパ腫では,内視鏡像の改善はみられず,病理組織像の悪化が認められたが,経過中に7例で病変部のH.Pylori菌体量の減少あるいは自然消失が認められた.一方,非腫瘍性RLHでは,H.Pyloriは持続感染し,内視鏡および組織所見は経過中に明らかな進展を認めなかったが,除菌治療(5例で施行)後には内視鏡所見の改善を認めた.以上から,H.Pylori感染は非腫瘍性RLHとの間に強い関連性を有するが,MALTリンパ腫の発育,進展には直接関与しないことが示唆された.また,深部浸潤を来した低悪性度MALTリンパ腫は,少なくともその前段階の,表層浸潤にとどまり,除菌治療に反応する非腫瘍性RLHとは明確に区別されるべきと考えられた.