今月の主題 Helicobacter Pyloriと胃リンパ腫
主題症例
Helicobacter pyloriの除菌により改善をみた胃MALTリンパ腫の1例―免疫グロブリン遺伝子再構成の変動とともに
著者:
堀公行1
木下芳一2
松島由美2
千葉勉3
藤盛孝博4
藤江忠夫5
所属機関:
1堀胃腸科外科
2神戸大学医学部老年科
3京都大学医学部大学院消化器病態学
4獨協医科大学第2病理
5藤江医院
ページ範囲:P.1011 - P.1017
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要旨 Isaacsonらが提唱した胃MALTリンパ腫は,その後彼らによりHelicobacter Pylori(H. Pylori)の存在下で発症し,その除菌によって病変の消退することが報告された.筆者らは最近,胃角部大彎側にびらん性陥凹を認めた38歳の女性に対し,生検によりMALTリンパ腫を疑い,更に免疫グロブリン遺伝子IgH-J鎖の明らかな再構成バンドを認めたためMALTリンパ腫と確定診断した.Hpylori感染下にあることを確認後除菌療法を行ったところ,2か月後から病変は消失し異型細胞は激減した.一方,IgH-J鎖の再構成バンドも著明に減少した.しかし7か月後に至ってもかすかに陽性で,いまだ単クローン性Bリンパ球の胃粘膜内での残存を意味した.しかしながらH. Pyloriの胃MALTリンパ腫への関与と,その除菌により本症の改善する可能性が強く示唆された.