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文献詳細

雑誌文献

胃と腸31巻9号

1996年08月発行

文献概要

今月の主題 早期胃癌の内視鏡的粘膜切除―適応拡大をめぐる問題点 主題

早期胃癌に対する腹腔鏡下手術―外科の立場からみた内視鏡的粘膜切除への提言

著者: 大谷吉秀1 大上正裕1 久保田哲朗1 熊井浩一郎1 北島政樹1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部外科

ページ範囲:P.1121 - P.1128

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 要旨 われわれは早期胃癌の中でも,①術前深達度診断でm,②Ⅱaでは長径25mm以下,③Ⅱcでは長径15mm以下かつUl(-)を満たす症例に対して,リンパ節転移の危険性がほとんどないことから局所切除の適応と判断し,lesion lifting法による腹腔鏡下胃局所切除術ならびに腹腔鏡下胃内粘膜切除術の2種類の手術を積極的に実施してきた.これらの手術と内視鏡的粘膜切除(EMR)との相違は,腹腔鏡下手術では水平方向,垂直方向ともに十分なsurgical marginを確保した一括完全切除と,その組織を用いた十分な病理組織学的検索がより確実に行えることである.当教室では一括完全切除を根治切除の原則とする立場から,EMRの適応を長径10mm以下としている.悪性疾患とはいえ外科的切除によりほぼ完治が期待される胃粘膜癌に対しては根治性の確保が最も重要である.EMRや腹腔鏡下手術の今後の発展を期待するうえでも,適応については厳格な対応が重要であり,完全切除を確認しえない場合や,経過観察中に癌の局所再発を認める症例では躊躇せず手術による根治的治療を実施すべきである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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