食道表在癌のX線的深達度診断―m1~sm1癌の側面像所見について
著者:
大山隆
,
馬場保昌
,
加来幸生
,
西山昌宏
,
牟田仁彦
,
武本憲重
,
竹腰隆男
,
丸山雅一
,
松原敏樹
,
植田守
,
加藤洋
,
柳沢昭夫
ページ範囲:P.1311 - P.1322
要旨 1986年から1996年までに癌研内科または外科で手術または内視鏡的粘膜切除され,十分に病理学的検索の行われたm1からsm1までの食道表在癌のうち,X線側面像の評価可能な36例36病変(m1癌18例,m2癌4例,m3癌7例,sm1癌7例)を対象に,組織学的に深達度の細分類(m1,m2,m3,sm1)を行い,肉眼型分類,大きさ,深達度について検討し,X線所見(特に側面像)の分析から深達度診断の手掛かりを求めた.肉眼型は隆起型は22%(8例),陥凹型は72%(26例)および0-Ⅱb型5.6%(2例)で,陥凹型が過半数を占めていた.大きさと深達度の関係では,1cm以下の7例はすべてm(m1~m3)癌であり,1cm以上ではsm癌の頻度が増加する傾向がみられた.深達度とX線側面像所見との関係は,m1・m2癌22例では所見なしが55%(12例)と過半数を占め,壁不整のみ4.5%(1例),直線化が41%(9例)で,陥凹化を示した症例は1例も認められなかった.一方,m3・sm1癌14例では直線化が57%(8例)と過半数を占め,陥凹化が29%(4例)もみられたが,所見なしはわずかに14%(2例)にすぎなかった.結局,m1・m2とm3・sm1では,側面像所見に差がみられ,その特徴は,m1・m2癌は辺縁像の異常を認めないものが多いのに対して,m3・sm1癌では直線化や幅のある不整陥凹像が増加することである.以上の所見を正面像所見と組み合わせることによって深達度診断を可能にするものと考えられた.