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雑誌目次

雑誌文献

胃と腸32巻2号

1997年02月発行

雑誌目次

今月の主題 十二指腸乳頭部癌―縮小手術をめざして 序説

十二指腸乳頭部癌―縮小手術をめざして

著者: 望月福治

ページ範囲:P.133 - P.134

 「十二指腸乳頭部病変」が本誌に初めて主題として取り上げられたのは1972年,第7巻11号である.それから16年を経過した1988年,第23巻10号に「十二指腸乳頭部癌」を主題とした特集号が刊行されている.

 第7巻をひもといてみると,十二指腸乳頭部病変に対する当時の状況を知りえて興味深い.第7巻を所蔵していない読者も多いことと推察されるので,その内容を振り返りながら少し紹介してみよう.すなわち,第7巻には主題としてX線診断と内視鏡診断が各々2題ずつ取り上げられており,これに座談会を加え構成されている.X線診断では,低緊張性十二指腸造影による乳頭像と,経皮経肝直接胆道造影法(PTC)による胆管像の両面から検討が加えられ,まず十二指腸乳頭部の正常像,次いで異常病変像が述べられている.内視鏡診断ではVater乳頭部と乳頭開口部の正常形態に続き,良性病変を交えての乳頭部の内視鏡的異常像,生検診断,ERCPなどの論文である.当時は乳頭部癌を独立疾患とするよりは膨大部癌,膵癌を含めて乳頭部領域癌として扱われている.主題症例では乳頭部癌が5例,異型上皮など境界病変が3例報告されていることは興味深い.内視鏡像は画像もまだ小さく,やっと十二指腸が内視されるようになりましたという感じがしないでもない.したがって,基本的には低緊張性造影が診断の主役であり,大手を振ってまかり通っていたと言える.当時の編集後記をみると,“低緊張性十二指腸造影法が唯一の形態学的検査法であるという従来の考え方に対し,数年来ファイバー十二指腸鏡(原文)の開発進歩により,直視下にこれを観察し,生検や細胞診が行われるようになり,診断成績も更に向上した.十二指腸も胃や食道と同様,診療の第一線の医師にとって自由に料理しうる臓器となり,今後の進展が楽しみである(春日井達造)”とあり,いわば乳頭部癌の黎明期にあったと言える.

主題

十二指腸乳頭部腫瘍の臨床病理

著者: 山口幸二 ,   清水周次 ,   佐伯修治 ,   横畑和紀 ,   千々岩一男 ,   高嶋雅樹 ,   田中雅夫

ページ範囲:P.135 - P.141

要旨 十二指腸乳頭部(乳頭部)の解剖,乳頭部腺腫,乳頭部腺癌につき自験例を含め臨床病理学的事項を概説した.また,最近報告例の増えてきた早期乳頭部癌,無黄疸乳頭部癌について論じ,臨床上良悪性の鑑別診断で重要な乳頭部腫瘍の生検の問題点につき言及した.

十二指腸乳頭部癌の診断

著者: 三好広尚 ,   中澤三郎 ,   芳野純冶 ,   山雄健次 ,   乾和郎 ,   山近仁 ,   印牧直人 ,   若林貴夫 ,   奥嶋一武 ,   岩瀬輝彦 ,   滝徳人 ,   服部外志之

ページ範囲:P.143 - P.149

要旨 最近経験した十二指腸乳頭部癌16例の診断について内視鏡を中心に報告した.臨床症状は,黄疸が16例中10例(62.5%)と高率に認められ,腹痛,発熱,黒色便が各1例で,無症状例は3例であった.入院時血液生化学検査はγ-GTP値,次いでALP値,総ビリルビン値の異常が認められた.生検診断率はERCP下生検で癌陽性と診断しえたものは12例中10例(83.3%)で,悪性所見が得られなかった2例の肉眼型は露出腫瘤型,組織型は中分化型管状腺癌であった.一方,PTCS下生検で癌陽性と診断しえたものは7例中5例(71.4%)で,悪性所見が得られなかった2例の肉眼型は腫瘤潰瘍型,組織型は高分化型管状腺癌であった.十二指腸乳頭部癌におけるEUS,細径超音波プローブの進展度診断能はそれぞれ十二指腸浸潤は89%,100%,膵臓浸潤は78%,90%であり,EUSなど従来の診断法に細径超音波プローブを加えることで,より正確な進展度診断が可能となった.

十二指腸乳頭部癌の診断―EUSの立場から

著者: 安田健治朗 ,   中島正継 ,   趙栄済 ,   向井秀一 ,   芦原亨 ,   平野誠一 ,   望月直美 ,   田中聖人 ,   宇野耕治 ,   東條正英 ,   富岡秀夫 ,   矢崎とも子 ,   塚田圭子 ,   上田モウセ ,   宮田正年 ,   李相植

ページ範囲:P.151 - P.156

要旨 超音波内視鏡(EUS),ならびに超音波プローブ(IDUS)による乳頭部癌診断の意義は,腫瘍の進展度診断である.38例の乳頭部癌のうち,超音波(US)で膵胆管拡張を指摘された25例の中で5例がEUSで診断された.また,USで異常を認めなかった5例のうち1例がEUSで診断されたが,いずれもEUSの内視鏡機能による診断であった.EUSによる乳頭部病変の鑑別診断も期待されるが,EUS,IDUSとも他の画像診断法で指摘された病変の進展度を判定する手段と考えられた.EUSによる乳頭部癌の進展度正診率は十二指腸浸潤診断で84.4%,膵浸潤診断で81.3%,腫瘍進展度診断で78.1%,リンパ節転移診断で75%であった.IDUSでは,それぞれ80%,80%,70%,70%であった.満足できる成績とは言えないが乳頭部癌に対する治療法の選択を決定する際,特に縮小手術や内視鏡治療を論じる際に不可欠な検査法として評価される.

十二指腸乳頭部癌の診断―CT,MRCP,血管造影などの画像診断

著者: 廣橋伸治 ,   打田日出夫 ,   大石元 ,   大倉享 ,   徳野恵津子 ,   明楽恵 ,   伊藤高広 ,   廣橋里奈 ,   松尾祥弘 ,   阪口浩 ,   松尾尚樹

ページ範囲:P.157 - P.164

要旨 十二指腸乳頭部癌の画像診断の主役は内視鏡と内視鏡的超音波診断法である.しかし,リンパ節腫大や血管浸潤ならびに胆管・膵管浸潤などの進展度診断には,CTやMRCPおよび血管造影が診断に役立つこともある.MRCPは従来の胆管・膵管の診断法であった内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)と異なり,全く非侵襲的に胆管・膵管像を得る方法であり,術者の技量に左右されないため容易に施行でき,特にERCPの施行困難な乳頭部に大きな腫瘤を形成し,胆管・膵管が完全に閉塞している場合にも,胆管膵管の全体像を得ることができるため,本症の診断に貢献すると考えている.

十二指腸乳頭部癌の診断―各種画像診断能の比較

著者: 浅原新吾 ,   有山襄 ,   須山正文 ,   佐藤一弘 ,   崔仁煥 ,   窪川良広 ,   若林香 ,   長浜隆司 ,   工藤卓也 ,   神谷尚則 ,   窪田賢輔

ページ範囲:P.165 - P.171

要旨 乳頭部癌の進展度診断を検討した.USで腫瘍が描出できたものはなかった.CTの腫瘍描出率は54.5%であったが,US,CTとも全例で膵・胆管拡張などの副次所見を認めた.血管造影では腫瘍径が10mm以下の2例に異常がなく,llmm以上では80%以上に異常がみられた.EUSは十二指腸浸潤の有無が全例で正診できたが,膵浸潤の正診率は77.8%であった.IDUSも十二指腸浸潤の有無は全例で正診でき,膵浸潤は有無,程度とも全例で正診できた.MRCPはERCPが不能であった症例で膵管の描出が可能であった.乳頭部癌の存在診断にはUS,CT,MRCPが,進展度診断には血管造影,EUS,IDUSが有用であった.

十二指腸乳頭部癌の外科治療―幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を中心に

著者: 宮崎亮 ,   池田靖洋 ,   岩永真一 ,   中山吉福 ,   眞栄城兼清 ,   笠普一朗 ,   廣吉元正 ,   竹原尚之 ,   濱田義浩 ,   緒方賢司 ,   岡本潔 ,   安波洋一

ページ範囲:P.173 - P.179

要旨 十二指腸乳頭部癌の外科治療と予後についてまとめた.当科で1987~1996年に乳頭部癌に対して施行した幽門輪温存膵頭十二指腸切除術は29例であった.4例の絶対的非治癒切除を除く25例の5年生存率は52.1%であった.予後を規定する因子として膵浸潤とリンパ節転移が特に重要であった.癌浸潤がOddi筋内にとどまる早期乳頭部癌の5年生存率は100%であった.根治性とQOLを考慮した治療として幽門輪温存膵頭十二指腸切除術が乳頭部癌に対しての合理的な手術であろう.また画像診断の進歩とともに,内視鏡的乳頭切除術を含めた縮小手術も視野に入ってきた.

十二指腸乳頭部癌の内視鏡的治療の現状―内視鏡的切除を試みた十二指腸乳頭部癌の1例

著者: 伊藤彰浩 ,   後藤秀実 ,   内藤靖夫 ,   廣岡芳樹 ,   瀧智行 ,   早川真也 ,   渡辺吉博 ,   石黒義浩 ,   早川哲夫 ,   河辺由憲 ,   古川剛

ページ範囲:P.180 - P.181

〔患者〕57歳,男性.1993年8月,スクリーニングの上部消化管内視鏡検査で十二指腸主乳頭部腫大,開口部隆起の顆粒状変化を認め,生検で乳頭部癌と診断された.入院時現症および検査成績に特に異常を認めなかった.

十二指腸乳頭部癌の内視鏡的治療の現状―内視鏡的乳頭部腫瘍切除術を施行した1例

著者: 真口宏介 ,   柳川伸幸 ,   須賀俊博 ,   丹野誠志 ,   藤井常志 ,   小原剛 ,   斉藤裕輔 ,   高後裕

ページ範囲:P.182 - P.185

〔患者〕73歳,男性.

〔主訴〕特になし.

十二指腸乳頭部癌の内視鏡的治療の現状―内視鏡的切除を施行した十二指腸乳頭部腺腫の1例

著者: 安藤白二 ,   岡山安孝 ,   大原弘隆 ,   伊藤誠

ページ範囲:P.186 - P.187

〔患者〕50歳,女性.検診目的で行った上部消化管内視鏡検査で十二指腸乳頭部の腫大を指摘され,当院へ紹介,入院となった.

十二指腸乳頭部癌の内視鏡的治療の現状―内視鏡的切除術を行った十二指腸乳頭部腺腫内癌の1例

著者: 猪狩功遺 ,   亀井明 ,   佐藤栄一 ,   高野浩一 ,   岡田安郎 ,   加来良夫 ,   小泉浩一 ,   甲斐俊吉 ,   丸山雅一 ,   柳澤昭夫 ,   加藤洋

ページ範囲:P.188 - P.190

〔患者〕36歳,男性.家族性大腸腺腫症(FAP)の経過観察中に,十二指腸乳頭部腫瘍が発見されたが,生検で異型を伴わない腺腫であったため放置した.1993年9月,FAPに対して大腸全摘術を施行した.1996年7月,急性膵炎症状が出現し,乳頭部病変は腺腫のままであったが,症状改善を目的に内視鏡的切除術を行った.

早期胃癌研究会症例

再発を繰り返した分類不能の腸潰瘍の1例

著者: 足立経一 ,   末次浩 ,   日高勝子 ,   橋本朋之 ,   ,   鍛治武和 ,   串山義則 ,   河村朗 ,   天野和寿 ,   石原俊治 ,   奥山俊彦 ,   平川和也 ,   有馬範行 ,   福本四郎 ,   矢野誠司 ,   長岡三郎

ページ範囲:P.203 - P.211

要旨 患者は44歳,女性.1991年6月微熱,下痢傾向,左下腹部痛を主訴に来院.初診時,注腸X線検査および大腸内視鏡検査で,直腸‐S状結腸に縦走潰瘍を認めた.潰瘍の増悪,強いとう痛のため,直腸切除を施行.病理組織学的には特異的な所見を認めなかった.術後,とう痛は消失していたが約1か月半後,吻合部近傍に潰瘍の再発を認め,再びとう痛が出現し,増強してきたため,2回目の手術(直腸‐S状結腸切除術)を施行した.人工肛門の口側に再び潰瘍の発生を認め,腸管穿孔を起こしたために3回目(S状結腸,下行結腸切除術),4回目(横行結腸,下行結腸,盲腸切除術)の手術を施行したが,いずれの切除標本の病理組織学的検索でも特異的な所見を認めないこと,現在までのところ同様の経過をとった症例の報告はないことから,分類不能の腸潰瘍と診断し,報告した.治療として,ステロイド剤,elemental diet療法,絶食,高カロリー輸液などを行ったが,無効であった.1994年8月には,内視鏡検査で回腸末端に潰瘍の再発を認めており,治療に難渋している.

cap polyposisの1例

著者: 小林広幸 ,   望月祐一 ,   佐藤智雄 ,   吉田隆亮 ,   岸川英樹 ,   中村昌太郎

ページ範囲:P.213 - P.219

要旨 患者は67歳,女性.3年前から下腹部痛,粘液便あり.直腸に多発性隆起病変を認め,直腸粘膜脱症候群(MPS)を疑い経過観察していたところ,約1年後にS状結腸中部と上部にも新たに多発性隆起病変が出現していた.MPSとしては特異な病変の口側進展からcap polyposis(CP)を疑い,保存的治療を継続したが,症状は改善せず手術施行.切除標本でCPに特徴的な肉眼像(腸管の短軸方向の索状ひだの頂部に縦列する,表面発赤調の隆起病変で介在粘膜は正常)と病理組織像〔隆起表面粘膜の陰窩の過伸展と頂部に帽子(cap)状の炎症性肉芽組織の付着〕を認めCPと確診した.CPはMPSの類縁疾患と考えられているが,本邦ではまだ十分に認識されてなく,貴重な症例と考えられた.

十二指腸・主膵管・総胆管の表層拡大型十二指腸乳頭部癌の1例

著者: 今村哲理 ,   村島義男 ,   栃原正博 ,   夏井清人 ,   安保智典 ,   須賀俊博 ,   藤永明 ,   宮川宏之 ,   真口宏介 ,   長川達哉 ,   豊田成司 ,   狩野吉康 ,   東野清 ,   大村卓味 ,   佐藤隆啓 ,   八百坂透 ,   加藤茂治 ,   柳川伸幸 ,   村岡俊二 ,   佐藤利宏

ページ範囲:P.221 - P.226

要旨 十二指腸・主膵管・総胆管の表層拡大型乳頭部癌の1例を経験した.患者は61歳,女性.心窩部痛を主訴として1993年10月4日初診.十二指腸内視鏡検査およびX線検査で十二指腸第2部に乳頭の腫大と表面小結節状の広汎な丈の低い隆起病変を認めた,主乳頭前壁側に粘膜下腫瘍(SMT)も副病変として認めた.生検,ERCP,EUS所見も総合し乳頭部癌と診断した.1994年3月11日,膵頭十二指腸切除,および同年5月26日,膵体部追加切除を行った.病病理組織学的にOddi筋に達しない十二指腸粘膜内(m),主膵管内,総胆管内表層の分化型腺癌で,大きさは十二指腸粘膜面で52×40mmであった.

胃底腺領域内の限局性萎縮を伴う小胃癌の1例

著者: 深尾俊一 ,   山崎雅彦 ,   横田広子 ,   遠藤一夫 ,   葛島達也 ,   隅田英典 ,   中野貞生 ,   鈴木雅雄

ページ範囲:P.229 - P.233

要旨 患者は39歳,女性.心窩部痛を主訴に来院した.上部内視鏡検査で,胃体中部大彎に限局性の褪色した陥凹を認めた.胃X線検査では同部位に浅い陥凹性病変を認めたが,アレア模様には異常がなかった.切除標本では潰瘍瘢痕は認めず,体中部大彎に52×23mmの陥凹性病変がみられた.病理組織学的には陥凹性病変の大部分は萎縮した胃粘膜で,後壁寄りに大きさ9mmの低分化腺癌を伴っていた.

膵頭十二指腸切除後のBraun吻合部に発生した多発空腸癌の1例

著者: 西脇寛 ,   田中光司 ,   藤野一平 ,   池田哲也 ,   三宅哲也 ,   竹代章 ,   白石泰三 ,   武田博士

ページ範囲:P.235 - P.240

要旨 患者は68歳,女性.貧血,上腹部痛で来院した.既往歴として16年前に十二指腸癌,8年前にS状結腸癌の手術を受けている.上部消化管透視で,Braun吻合部を中心に胆管側,肛門側にまたがった不整で浅い陥凹病変を認め,口側には棍棒状ひだの集中像を認めた.内視鏡検査で切歯から約85cmのBraun吻合部に3型病変を,この病変から2cm口側でひだの集中を伴うⅡc型病変を認め,生検で2病変とも腺癌の結果を得た.摘出標本では,Braun吻合部上に4×3cmの不整形の3型癌を認め,2cm胃側に3mmのⅡc型癌を認めた.組織診断は,深達度は前者がmp,後者はsmで,両病変とも中分化型腺癌であった.組織学的にも2病変に連続性は認められなかった.多発空腸癌がBraun吻合部に発生した症例は,本例以外に欧米文献にも認めなかった.

今月の症例

長期間経過をみた逆流性食道炎の1例

著者: 中野浩 ,   野村知抄

ページ範囲:P.130 - P.132

〔患者〕68歳,男性.以前から胸やけに苦しんでいたが,数か月前から前胸部つかえ感が出現し近医を受診し,X線検査を受け食道に狭窄を指摘され来院した.いちご農家で長年前屈姿勢をとり,脊柱後彎が認められた.また,眼瞼結膜に貧血を認め,硬い肝臓を右季肋下に2横指触れた.

リフレッシュ講座 食道検査・治療の基本・2

食道超音波内視鏡検査の基本

著者: 神津照雄

ページ範囲:P.191 - P.194

 はじめに

 食道は,超音波内視鏡検査の対象となるのに最も適した臓器である.超音波ビームの減衰の点から癌の他臓器浸潤の診断やリンパ節転移の診断は超音波周波数7.5~10MHzの低周波数の振動子が適している.言い換えると,内視鏡と超音波の一体化した機種が病巣の全体像把握に適している.一方,食道壁内の浅い病変の描出には15~20MHzの高周波振動子が適している.すなわち内視鏡生検鉗子挿入型の細径超音波プローブである.低周波数の超音波検査については既に報告しているので文献を参照していただきたい.本稿では高周波振動子による食道の超音波検査を中心に述べる.

早期胃癌研究会

第36回「胃と腸」大会から

著者: 幕内博康 ,   西元寺克禮

ページ範囲:P.195 - P.196

 1996年9月の早期胃癌研究会は,第36回「胃と腸」大会として第38回日本消化器病学会大会の前日の9月18日にパシフィコ横浜(会議センター)で開催された.司会は幕内(東海大学第2外科)と西元寺(北里大学東病院内視鏡科)が担当し,4例が供覧された.

1996年10月の例会から

著者: 西俣寛人 ,   磨伊正義

ページ範囲:P.197 - P.199

 1996年10月の早期胃癌研究会は,10月16日(水),西俣寛人(南風病院)と磨伊正義(金沢がん研究所外科)の司会で行われた.ミニレクチャーは松川正明(昭和大学豊洲病院消化器科)が,注腸X線検査について行った.

1996年11月の例会から

著者: 牛尾恭輔 ,   中野浩

ページ範囲:P.200 - P.201

 1996年11月の早期胃癌研究会は,牛尾恭輔(国立がんセンター中央病院放射線診断部)と中野浩(藤田保健衛生大学消化器内科)の司会で,11月20日(水)に行われた.ミニレクチャーは“大腸腫瘍性病変に対する超音波細径プローブの有用性と問題点”として,斉藤裕輔(旭川医科大学第3内科)が行った.

Coffee Break

CFは何の略?

著者: 多田正大

ページ範囲:P.172 - P.172

 先日,渋谷の街を歩く機会があった.たむろする奇天烈な服装の若者の会話がいやおうなく耳に入ってきたのであるが,私には若者言葉の半分も理解できず,遠い異国に来たような錯覚を感じたと同時に,自らの年齢を痛感させられた.

 渋谷言葉に限らず,われわれの言語は時代とともに進化するものである.生活,習慣,科学の進歩に伴って,当然,新しい言葉が生まれる.同時に情報伝達を迅速化するための略語も数限りなく産み出されている.

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欧文目次

ページ範囲:P.129 - P.129

「胃と腸」質問箱

著者: 多田正大

ページ範囲:P.132 - P.132

最近の注腸X線検査専用の造影剤の特徴

(質問)最近,注腸X線検査を行う機会が増えていますが,造影剤についてご質問します.私の場合,上部消化管用造影剤を約65w/v%程度に薄めて使用していますが,結構,fine network patternも描出できます,最近開発されている注腸X線検査専用の造影剤の特徴は何でしょうか?

「胃と腸」質問箱

著者: 斉藤裕輔

ページ範囲:P.141 - P.142

超音波内視鏡の器材選択

(質問)これから器材を揃えて超音波内視鏡検査を始めたいと思っています.その選択についてアドバイスをしてください.なお私の場合,EUSの目的は早期癌の深達度診断を中心にしたいと考えています.

 ①予算の関係上,フルセットを購入できないのですが,将来性や目的を考えると,細径プローブと専用スコープとどちらが良いでしょうか?

書評「CHOLELITHIASIS:Causes and Treatment」

著者: 奥田邦雄

ページ範囲:P.150 - P.150

 このたび私の畏友,九州大学名誉教授中山文夫君が医学書院から「CHOLELITHIASIS―Causes and Treatment」を上梓された.本書はすばらしい名著であるの一言に尽きる.

 最初の頁に,Aschoff教授が1909年に描いたコレスロール結石の割面の絵が示されているが,驚くほど正確に克明に描写されている.序文に,中山教授が九州大学第1外科に入局して,三宅博教授から胆石をやらないかと言われ即座にそのように決心したこと,胆石の材料となる胆汁の理解のため有機化学を勉強され,外科医としてユニークな地位を打ち立てられた経緯が述べられている.中山教授は学問はもとより,語学に非常にたけておられ,この本の英語は日本人が書いたとは思えない高級なものである.

書評「MRI診断演習」

著者: 宮坂和男

ページ範囲:P.212 - P.212

 画像診断に関するテキストの目次立ては,疾患ごとである場合が圧倒的に多い.しかし,日常診療では,最初から診断はわからない.様々な所見から,可能性ある疾患をいくつか想定し,所見にそぐわない疾患をふるい落とし(鑑別診断し),最も可能性の高い診断へと絞り込む.

 荒木力先生による「MRI診断演習」には,3つの特徴がある.第1は,疾患ごとではなく症状や特徴的画像所見からスタートするQ&A形式である.可能性のある疾患,病態を読者個々に考えさせる.謎解きするような楽しさがある.第2に,画像所見から病態・撮像原理に至るまでの記述が階層化されている.Q&Aの後で,なぜこのような画像所見が起こるのだろうか?と問う.病態は?撮像法は?疾患の病態機序が説明される.次いでMRIの原理的な説明がある.本書の中では“note”である.更に詳しく調べたければ厳選された引用文献がある.階層化されているので,興味があれば次々と進むことができる.時間にゆとりのない人は,中途でやめればよい.第3に,MRI原理が付録(appendix)として巻末に掲載されている.MRIの原理は複雑である.加えてほとんどのテキストは,原理が第1章を占める.段階的に覚える(教育する)という伝統的教育法の流れである.それでは最初の数頁を読んで混乱の深淵にはまるかもしれない.本書は症例でMRIを実感した後の原理なので,問題点が比較的明確にされており,臨床に直結している.症例だけでなく,もっと原理を知りたいと思う人の欲求不満も解消してくれる.

書評「Q&A腹腔鏡下胆囊摘出術―こんな時どうする?」

著者: 堀孝吏

ページ範囲:P.220 - P.220

 腹腔鏡下手術が施行されるようになってまだ10年にも満たない現在,様々な領域でこの術式の適応が拡大され,施行されるようになってきた.本術式が急速に広まった要因の1つに,術後とう痛の著明な減少=患者側の利点が,大きく関与している.単に治ればよい治療から安全な治療へ,そしてより苦痛のない治療へと医療に対する要求が変化してきたのは当然のことと考える.

 当院でも,1990年10月に最初の腹腔鏡下胆囊摘出術が施行された.当初は,鏡視下手術は特殊な術式と考える風潮もあったが,適応が拡大されるにつれて特殊な術式とはみなされなくなりつつある.適応に関しては,まだ流動的な領域も多いが,例えば,胃全摘術はやるが胃亜全摘術はやらないという腹部外科医はいないように,腹腔鏡下手術は適応があれば避けて通れない術式になると考えられる.今や,腹腔鏡下手術は腹部外科医にとって習熟しなければならない術式の1つと思われる.

編集後記

著者: 石黒信吾

ページ範囲:P.242 - P.242

 今回は,“十二指腸乳頭部癌―縮小手術をめざして”と題して特集を組んだ.十二指腸乳頭部癌を歴史的にみると,序説にもあるように前回の1988年の特集号に比べて種々の面で進歩している.診断面では,EUS,IDUS,CT,MRCPなどの新しい手法が導入され,外科的な手術にしてもQOLを考慮した幽門輪温存膵頭十二指腸切除術が普及し,縮小手術として乳頭局所切除や内視鏡的切除が検討されるようになったことがわかる.またOddi筋内にとどまる癌の予後が良いという成績も揃ってきた.しかしながら実際の画像診断面をみると,新しい手法の導入にもかかわらず,術前に早期の癌の浸潤範囲が確実に診断されているとは言えないのが現状である.今回の主題である縮小手術,特に乳頭局所切除あるいは内視鏡的切除をめざすためには,今後種々の手法を用いた正確な術前診断をめざすとともに,食道癌と同様にどのようにして症状の出ない早期の症例を拾い上げるかという問題が残されている.病理としても遺伝子を含むいろいろな手法による生検診断精度の向上や,肉眼型を含む,より詳細な症例の分析とともに,細胞診などを加味した,より簡便で正確な診断手法の開発が必要と思われる.管と実質臓器の両面を持つ乳頭部癌の診断はいまだ発展途上にある分野と言える.本特集は,消化管の画像診断を主とする本誌の特集としてはまれな特集号である.このような主題を取り上げたことは,画像診断手法の進歩により,消化管の診断でも内視鏡やX線のみならずEUSなどの手法が取り入れられている現在,本誌も,より積極的に新手法を取り入れた特集を組むようになっていく現れであるとも思える.

基本情報

胃と腸

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1219

印刷版ISSN 0536-2180

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