今月の主題 大腸腺腫症―最近の知見
主題
家族性大腸腺腫症における長期経過からみた大腸病変の取り扱い
著者:
山城正明1
牛尾恭輔1
内山菜智子1
飯沼元1
宮川国久1
石川勉1
横田敏弘2
藤田伸3
赤須孝之3
杉原健一3
森谷冝晧3
落合淳志4
下田忠和5
所属機関:
1国立がんセンター中央病院放射線診断部
2国立がんセンター中央病院内科
3国立がんセンター中央病院外科
4国立がんセンター中央病院研究所病理部
5国立がんセンター中央病院臨床検査部
ページ範囲:P.551 - P.561
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要旨 1966年11月から1996年10月までの約30年間に国立がんセンターを受診し,家族性大腸腺腫症と診断され,経過観察が行われたのは78症例であった.56例に大腸の切除術がなされ,22例に結腸全摘回腸直吻合術が施行された.このうち3年以上の経過観察がなされた16例中7例で,残存した直腸に癌が出現し,初回手術から2回目手術までの平均follow-up年数は13.6年であった.この7例中3例に進行癌が出現したが,いずれも定期的な外来通院を中断し,長期間経過観察を受けていない症例であった.一方,定期的な経過観察が行われた症例では,早期癌は認められても進行癌の出現はなかった.これらの結果から,結腸全摘回腸直腸吻合術を行った症例では,放置すると10年以内に,進行癌が出現する危険性が高いことが判明し,直腸を温存した術式では,少なくとも年1回の経過観察の必要性が再確認された.