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文献詳細

雑誌文献

胃と腸32巻4号

1997年03月発行

文献概要

今月の主題 大腸腺腫症―最近の知見 主題

家族性大腸腺腫症における胃・十二指腸病変の長期経過

著者: 飯田三雄1 檜沢一興2 松本主之1 廣田千治2 中村昌太郎2 青柳邦彦2 八尾隆史3

所属機関: 1川崎医科大学内科(消化器Ⅱ) 2九州大学医学部第2内科 3九州大学医学部第2病理

ページ範囲:P.563 - P.576

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要旨 家族性大腸腺腫症19家系24症例の胃・十二指腸を,X線・内視鏡検査および生検によって平均14年経過観察した.胃底腺ポリポーシス11例の経過は,増加4例,減少2例,一時的な減少あるいは消失後に増加2例,新生1例,不変2例であった.年齢との関係は,30歳以下では増加傾向が強いが,30歳を超えると減少,消失,増加と多彩な変化を示した.胃腺腫12例の経過は,増加5例,新生4例,消失1例,不変2例であった.一方,十二指腸腺腫20例の経過は,増加7例,不変13例であった.増加例のうち3例では,6個の胃・十二指腸腺腫が急速に増大したため内視鏡的あるいは外科的にポリペクトミーが施行された.胃腺腫は20歳台,十二指腸腺腫は10歳台から発生し,ともに加齢とともに増加するが,30歳台後半からは増大例に高度異型の腺腫が認められた.十二指腸乳頭部腺腫15例の経過は,増大2例,新生3例,不変10例であった.2例(38歳,40歳)では,乳頭部からの生検で高度異型の腺腫が検出されたが,経過中組織像は不変であった.全例,経過中における胃・十二指腸癌の発生はなかった.以上の成績から,本症における胃・十二指腸病変は,予防的手術の適応とならないこと,X線および内視鏡検査による定期的な経過観察が極めて重要であること,径10mmを超える腺腫に対しては内視鏡的切除が必要であることが示唆された.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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