胃と腸32巻4号

1997年03月発行

今月の主題 大腸腺腫症―最近の知見

主題症例

胃・十二指腸に早期癌を認めた家族性大腸腺腫症の1例

著者： 鴨井隆一¹ 飯田三雄¹ 井上滋夫¹ 水野充¹ 黒木文敏¹ 松本主之¹ 藤村宜憲¹ 星加和徳¹ 笠井裕² 角田司² 清水道生³

所属機関： ¹川崎医科大学内科（消化器Ⅱ） ²川崎医科大学消化器外科 ³川崎医科大学病理科

ページ範囲：P.631 - P.641

文献概要

要旨　患者は41歳，男性．高校時代から排便時にときどき出血があったが，痔核のためと思い放置していた．1993年8月，近医で貧血を指摘され当院受診．注腸造影と大腸内視鏡検査で大腸腺腫症と診断され，当科に入院した．精査によりⅡc型早期胃癌，多発性胃腺腫，早期十二指腸癌，多発性十二指腸腺腫，回腸腺腫，直腸癌，下顎骨腫，腹壁脂肪腫を合併していた．大腸全摘・回腸瘻造設術，3/4胃切除術，十二指腸ポリープ切除術，胆囊切除術，腹壁腫瘤摘出術を施行した．胃・十二指腸に同時に早期癌を合併した症例はわが国で最初と思われる．わが国における胃癌合併例および十二指腸癌合併例の集計結果と併せて報告した．