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文献詳細

雑誌文献

胃と腸32巻5号

1997年04月発行

文献概要

今月の主題 粘膜下腫瘍様の食道表在癌 主題

粘膜下腫瘍様の食道表在癌―病理形態学的特徴

著者: 松田圭二1 渡辺英伸1 桑原史郎1 西巻正2 西倉健1 味岡洋一1 飯利孝雄1 榎本博幸1 武藤徹一郎3

所属機関: 1新潟大学医学部第1病理 2新潟大学医学部第1外科 3東京大学医学部第1外科

ページ範囲:P.671 - P.689

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要旨 食道の粘膜下腫瘍様(SMT様)の定義,頻度,形態形成経路を主体に検討した.対象は,全割された食道癌447病変(表在癌257病変,進行癌190病変)である.肉眼的にSMT様癌を,腫瘍が広範にわたって非腫瘍性上皮で覆われ,しかも癌の粘膜面露呈部分が円弧状のものと定義した.この定義に沿って,全面積に対する癌露呈部面積の比率をみると,SMT様癌は両面積比が50%未満(平均20.8±13.8%)で,癌の露呈部が円弧状の隆起病変となった.SMT様癌は4.2%(19/447)みられ,表在癌で2.7%(7/257),進行癌で6.3%(12/190)であった.19病変のうち,扁平上皮癌(scc)は7病変(36.8%),類基底細胞癌3病変(15.8%),腺癌3病変(15.8%),腺扁平上皮癌3病変(15.8%),粘表皮癌2病変(10.5%),内分泌細胞癌1病変(5.3%)であった.しかし,組織型別にみると,扁平上皮癌がSMT様形態をとる頻度は1.7%(7/407)と低かった.これに対し,特殊型癌は,食道癌全体からみると出現頻度が低いにもかかわらず,SMT様形態をとる頻度が高かった(p<0.01).SMT様癌の深達度は,sm2が3病変,sm3が4病変,mp癌2病変,a1以深が10病変で,m癌,およびsm1癌がSMT様に見えたものはなかった.SMT様癌19病変の形態形成経路は,大きく4つに分類された.すなわち,(a)表層上皮内の癌細胞が主に上皮下へ進展したもの,(b)食道腺(導管を含む)に由来のもの,(c)食道内の異所性胃粘膜(通常,下部食道や上部食道にみられることが多い)に由来するもの,(d)脈管浸潤の顕著なもの,である.(a)の経路と判定した症例は低分化scc(3病変),類基底細胞癌(3病変)が主で,他に内分泌細胞癌が1例あった.(b)の経路と推定される中分化sccが4病変みられた.更に,食道腺・導管に由来する微小中分化sccが5病変みられた.腺癌成分を有する癌は全例で胃腺窩上皮型粘液が陽性であり(食道腺やその導管は陰性),これらの癌は異所性胃粘膜に由来,すなわち(c)の経路に由来すると判定された.(d)の脈管浸潤のみでSMT様癌になったものはなかった.食道SMT様癌はsccの特殊型癌,食道腺由来の癌,更に異所性胃粘膜由来の癌が主で,SCCの中でも特殊な発育様式をする癌,ないし上皮下の組織に由来する癌であると言えよう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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