今月の主題 胃噴門部領域の病変 (1)癌
主題
噴門部領域の進行癌における進展・浸潤範囲の画像診断―超音波内視鏡の立場から
著者:
水口安則1
土方淳2
牛尾恭介1
松江寛人1
石川勉1
宮川国久1
飯沼元1
吉江浩一郎1
内山菜智子1
後藤田卓志2
永田和弘2
落合淳志3
下田忠和4
所属機関:
1国立がんセンター中央病院放射線診断部
2国立がんセンター中央病院内視鏡部
3国立がんセンター研究所病理部
4国立がんセンター中央病院臨床検査部
ページ範囲:P.1053 - P.1061
文献購入ページに移動
要旨 胃癌の食道浸潤の的確な術前評価は,切除術式を決定するうえで重要な問題となってくる.今回,噴門部領域の進行癌の食道浸潤の超音波内視鏡(EUS)診断の有用性について検討した.1994年1月~1996年12月の期間に当院で切除された噴門部領域を含む進行胃癌のうち,術前に食道浸潤の有無が問題となり,EUSが施行された53例を対象とした.EUSはラジアル走査式を使用,脱気水充満法または,バルーン装着法により施行,EUS所見と病理組織学的所見を対比検討した.肉眼型は3型,4型が45例を占め,また組織型は未分化型が42例であった.病理組織上食道浸潤が認められた症例のうち,EUSで食道浸潤ありと診断できた症例は27例中22例(sensitivity 81.5%),一方,食道浸潤が陰性であったものを浸潤なしと診断したものは,26例中25例(specificity 96.2%)であり,accuracy88.7%であった.食道浸潤の範囲を±1cmまでの誤差を診断一致とした場合は,一致率は83.0%(44/53例)であった.主な誤診の理由は,広範な癌の浸潤のための噴門の不明瞭化あるいは破壊による正確なEGjunctionの同定が不確実であったこと,少量の腫瘍による食道浸潤のためEUSでの認識が困難であったことなどが考えられた.