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文献詳細

雑誌文献

胃と腸33巻1号

1998年01月発行

文献概要

早期胃癌研究会症例

除菌成功後に病変の拡大をみた胃MALTリンパ腫の1切除例

著者: 丹羽康正1 後藤秀実1 亀山祐行1 松井真寿美1 野村直人1 細井努1 新海眞1 早川哲夫1 塚本純久2 長坂徹郎3

所属機関: 1名古屋大学医学部第2内科 2愛知県総合保健センター 3名古屋大学医学部検査部

ページ範囲:P.109 - P.116

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要旨 患者は72歳,男性.1995年3月人間ドックを契機に胃内視鏡検査で胃角部前壁にⅡc様病変を指摘され,生検でlow-gradeな胃MALTリンパ腫と診断された.更に種々の検査によりH. pylori陽性で,深達度sm,表層拡大型のlow-gradeなMALTリンパ腫と診断した.除菌治療によってH. pylori陰性となり,一時的に腫瘍も消失したが,除菌後7か月で胃体下部前壁に新たにⅡc様病変と胃体上部小彎から後壁にびらんの多発を認め,生検でlow-gradeなMALTリンパ腫と診断され,最終的に胃全摘術を施行した.切除胃の病理診断は胃悪性リンパ腫(mixed cell type)で深達度smであった.本症例で除菌治療が成功し一時的に腫瘍が消失したにもかかわらず,病変の拡大をみたのは,比較的早期の段階からやや大型の異型リンパ球が存在していた可能性と,短期間ではあるがtransformationを起こし,悪性度の高い組織像に変わり病変の拡大をみた可能性の2つが推測された.low-gradeな胃MALTリンパ腫を除菌で治療する場合,腫瘍の消失の有無にかかわらず,経過観察には十分注意すべきと思われた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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