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文献詳細

雑誌文献

胃と腸33巻11号

1998年10月発行

今月の主題 早期大腸癌の組織診断―諸問題は解決されたか

序説

早期大腸癌の組織診断基準をめぐって

著者: 下田忠和1

所属機関: 1国立がんセンター中央病院臨床検査部病理

ページ範囲:P.1433 - P.1434

文献概要

 大腸腫瘍の病理診断基準の違いが大きな問題として提起されたのは,本誌「胃と腸」第27巻6号(1992年6月号)「早期大腸癌の病理診断の諸問題-小病変の診断を中心に」においてであった.その数年前までは大腸癌あるいは腺腫と言えば,そのほとんどが隆起型あるいはポリープ病変であり,その組織診断基準に関してそれほどの問題は生じなかった.なぜなら,そのほとんどが臨床的にはpolypectomyによる治療で十分であったからである.しかし1980年代後半になって,大腸でも表面型腫瘍が認識されるようになり,更に内視鏡診断の進歩も相侯って,多くの表面型腫瘍が発見されるようになった.また同時に工藤らによって,粘膜下層に浸潤をしている10mm前後の表面型大腸癌が含まれていることが明らかにされた.

 更に病理学的にも小さな表面型sm浸潤癌の報告,またde novo発生の大腸癌の報告がなされた(中村1),Shimodaら2)).そのような経緯から,表面型腫瘍は大腸癌の発生ならびにその発育進展の面から大きな注目を集めるようになった.当時,中村は形態計測による大腸腫瘍の構造と核の異型度係数を用いた,癌の診断基準を提唱した.その結果は従来から腺腫と診断されてきたものの中に,異型度係数から癌と診断されるものが多いと報告し,大腸癌の70%はde novo carcinomaである根拠とされた.筆者ら3)も大腸癌の形態学的解析から同様のことを報告した.更に渡辺ら4)は,癌には異型度の異なった低ならびに高異型度癌があることを報告した.その中で,低異型度癌は従来の高異型度癌とは異なった診断基準が必要であることを強調した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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