特集 消化管悪性リンパ腫1998
主題 Ⅰ.総論
消化管悪性リンパ腫と全身性悪性リンパ腫とのかかわり―臨床の立場から
著者:
松本繁己1
大津敦1
吉田茂昭1
大津智子2
所属機関:
1国立がんセンター東病院消化器内科
2国立がんセンター東病院化学療法科
ページ範囲:P.314 - P.324
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要旨 消化管は節外性リンパ腫の好発部位であるが,節性リンパ腫に比し限局性の病変が多いため,わが国では手術療法が治療の第一選択とされ,全身性リンパ腫とは区別して取り扱われている.しかし,low-grade MALTリンパ腫のような組織学的に低悪性度と考えられる消化管悪性リンパ腫であっても,病期の進行している場合が少なからず(10%程度)認められ,また,節性悪性リンパ腫においても胃をはじめとする消化管に浸潤を有する場合が20%以上を占めるなど,診断学的にも消化管悪性リンパ腫と全身性悪性リンパ腫とのかかわりを正しく把握することが極めて重要な課題となっている.一方,治療学的な立場からみると,最近の多剤併用療法は進行期の全身性悪性リンパ腫をも治癒を可能としており,これに放射線による局所療法を組み合わせた集学的治療法が節性リンパ腫のかなりの部分に対する標準的治療法として確立している.これらの治療法はそのまま消化管悪性リンパ腫の治療にも応用可能であり,欧米では手術療法よりも非手術的治療法が標準的治療とすることで広くコンセンサスが得られつつある.一般的に節外性リンパ腫では原発部位による生物学的特性や臨床像に特徴があるため,全身性悪性リンパ腫に対応する診断・治療に関する知見に加えて,臓器固有の診断技術や治療を駆使することが必要であり,放射線科・消化器科・血液化学療法科・病理医などによる各科連携の総合的なチーム医療が必須である.