特集 消化管悪性リンパ腫1998
主題 Ⅱ.診断
胃悪性リンパ腫のX線診断―MALTリンパ腫のX線所見の中心として
著者:
中野浩1
野村知抄1
三沢美帆1
伊藤隆雄1
長坂光夫1
松浦良徳1
外間政希1
大橋儒郁1
鈴木理恵1
依光伊作1
宇野浩之1
神谷雅人1
西井雅俊1
保原怜子1
大橋秀徳1
高濱和也1
渡邊真1
黒田誠2
所属機関:
1藤田保健衛生大学消化器内科
2藤田保健衛生大学病理科
ページ範囲:P.325 - P.334
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要旨 胃悪性リンパ腫の診断,治療のうえで中心的存在となったMALTリンパ腫のX線診断について手術症例27例(びまん,大細胞型悪性リンパ腫併存例2例を含む)を対象として報告した.症例は男性13例,女性14例,平均年齢53.4歳であった.X線所見は,①多発潰瘍,びらん,②表面陥凹,③顆粒状粘膜,④肥厚粘膜ひだ,⑤腫瘤形成で,多くの症例で,これらの所見が混在していた.潰瘍,びらん,表面陥凹など陥凹性の病変は早期胃癌Ⅱc型と類似し,鑑別を要するが,その多発性,陥凹辺縁,陥凹面の平滑さなどの点で鑑別が可能である.顆粒状粘膜は粘膜固有層の顆粒状変化,腫瘤形成は粘膜に関連した腫瘤の存在部位を反映している.また,肥厚粘膜ひだは粘膜自体の肥厚で,伸展性が認められた.リンパ腫の診断では組織診断が優先しがちであるが,高度悪性リンパ腫との鑑別,移行例への疑問,経過観察例の観察のポイントなど,これらの点を見極めるうえで,上記のX線所見を中心としたX線診断は欠かせない.