特集 消化管悪性リンパ腫1998
主題 Ⅱ.診断
胃MALTリンパ腫の内視鏡および超音波内視鏡診断
著者:
末兼浩史1
飯田三雄1
中村昌太郎2
青柳邦彦2
所属機関:
1川崎医科大学消化器内科Ⅱ
2九州大学医学部第2内科
ページ範囲:P.353 - P.359
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要旨 胃MALTリンパ腫は胃原発悪性リンパ腫のほとんどのものを包括する.本研究では低悪性度MALTリンパ腫と高悪性度MALTリンパ腫の内視鏡像,超音波内視鏡像(以下EUS)を深達度,組織構成と対比して検討した.内視鏡上,低悪性度MALTリンパ腫は,凹凸顆粒状粘膜,びらんなどのreactive lymphoreticular hyperplasia(以下RLH)との共通所見のうえにⅡc様陥凹,易出血性,平盤状隆起などの所見が加わり多彩な像を示し,深達度の深いものにはひだの肥厚,硬化像が認められた.高悪性度MALTリンパ腫のうち,低悪性成分の併存を認めるものは凹凸顆粒状粘膜などの表層変化を伴った粘膜下腫瘤様隆起が,また高悪性成分のみから成るリンパ腫は表層変化のない決潰型の腫瘤がそれぞれ特徴的であった.なお,褪色調粘膜変化は治療後の退縮変化として注目すべきと考えられた.EUS上,深達度の浅い低悪性度MALTリンパ腫は非腫瘍性RLHと共通して表層性肥厚型を示し,深達度が深いものは特徴的な深部浸潤型を示した.活動性潰瘍はEUS判定を困難にし,潰瘍治癒後の再検査が必要と考えられた.一方,高悪性度MALTリンパ腫はEUS上腫瘤形成型を示したが,低悪性度成分併存群と非併存群の比較では後者のほうで深達度が深く大きい傾向が認められた.EUSは内視鏡の補助診断として深達度と発育進展状態を把握するうえで有用であり,治療方針決定や経過観察において必須の検査と考えられる.