特集 消化管悪性リンパ腫1998
主題 Ⅱ.診断
胃悪性リンパ腫の肉眼像と組織像の対比―生検診断の精度向上のために
著者:
永田和弘12
下田忠和2
落合淳志3
中西幸浩3
所属機関:
1国立がんセンター中央病院内科
2国立がんセンター中央病院臨床検査部病理
3国立がんセンター研究所病理部
ページ範囲:P.361 - P.372
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要旨 過去に原発性胃悪性リンパ腫またはreactive lymphoid hyperplasiaと診断された切除標本126例を対象に,肉眼型・組織型・深達度の見直し診断を行い,114例のリンパ節郭清症例の転移の有無を検討した.また,Helicobacter pylori(H.pylori)除菌による組織学的変化についても検討を加えた.胃悪性リンパ腫全体の肉眼型頻度は,表層型44%,潰瘍型14%,隆起型21%,決潰型19%,巨大皺襞型2%であった.表層型,巨大皺襞型ではlow-grade lymphoma,MALT type(LG-MALT)の組織像を呈することが多く,隆起型,決潰型では,large-cell lymphomaを主体とするものが大半であった.進行癌様病変の周囲に表層型を伴うものは,その表層部分ではLG-MALTの組織像を呈していた.次に病変の深達度は,表層型,潰瘍型,隆起型,決潰型の順に深い傾向があり,LG-MALTを主体とするものはsmまでの浸潤にとどまることが多かった.リンパ節転移は全体の46%に認められ,組織型が大細胞型優位,深い深達度,肉眼型が表層型以外を呈することが危険因子であった.またLG-MALT単独では22%にリンパ節転移を認め,その特徴的肉眼所見は表層型に伴う隆起成分の出現で,その部分ではsmにmassiveに浸潤し,逆に隆起成分がないものでは粘膜筋板下に少量浸潤しているにすぎなかった.H.piylori除菌による組織学的変化は,粘膜内における腺管密度の減少,限局性の線維化,浮腫による問質の増大であった.粘膜下層以下では,このような所見は認められず,腫瘍細胞が残存することが多かった.以上の結果から,胃悪性リンパ腫の生検診断の際に留意すべき点について考察した.