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特集 消化管悪性リンパ腫1998 ノート 基礎編
大腸にMALT組織,MALTリンパ腫は存在するか?
著者: 味岡洋一1 渡辺英伸1 丸田和夫1 山下浩子1
所属機関: 1新潟大学医学部第1病理
ページ範囲:P.483 - P.484
文献購入ページに移動大腸には,胃・小腸とともにGALT(gut-associated lymphoid tissue)と呼ばれる局所免疫リンパ装置がある.大腸粘膜には,生理的状態でも孤立リンパ小節に類似したリンパ球の小集簇巣が,1cm2当たり平均15(結腸)~24.5個(直腸)存在する1).これらリンパ球小集簇巣と同部を被覆するM細胞(microfold cell)(腸内抗原をリンパ球小集簇巣に提示するために特殊に分化した円柱上皮細胞)は,併せてlymphoglandular complexと呼ばれ,大腸の局所粘膜免疫機構を担っている2).
正常の大腸では,lymphoglandular complexの約1%に胚中心形成がみられるにすぎない2).しかし,潰瘍性大腸炎やCrohn病などの炎症性腸疾患や腸管感染では,胚中心形成を伴うリンパ濾胞の過形成が起きる2)3).これら自己抗原刺激や細菌性外来刺激により惹起される胚中心を伴うlymphoglandular complexは,MALTリンパ腫の発生に不可欠4)な後天性MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)に相当するものと考えられる.
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