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文献概要
今月の主題 食道癌 序説
m3・sm1食道表在癌
著者: 𠮷田操1
所属機関: 1東京都立駒込病院外科
ページ範囲:P.945 - P.948
文献購入ページに移動はじめに
食道表在癌とは,癌の浸潤が粘膜下層までにとどまるものを言う1)が,症例数の増加とともに,その研究は目覚ましく変化した.なかでも表在癌を粘膜癌(以下m癌)と粘膜下層癌(以下sm癌)の2群に区別して考える必要が生じたことはよく知られている.その理由は,m癌とsm癌とが病理組織学的に異なった特徴を持っていることに起因するが,この特徴を利用した治療の成立が,臨床面でも両者の鑑別を正確にすることを要求している.m癌にはリンパ節転移がまれで,治療に際して局所の根治性だけを問題にすればよいのに対して,sm癌は平均40%前後の頻度でリンパ節転移を伴うため,局所とともに転移リンパ節を考慮した治療法が必要であるからである2).その後m癌の一部にもリンパ節転移が存在することが判明し,その実態を解明する必要が生じた3)4).このために,表在癌の深達度を亜分類してm癌を上皮内癌(m1癌),粘膜固有層癌(m2癌)ならびに粘膜筋層に浸潤した癌(m3癌)に細分類し,同時にsm癌の浸潤が表層1/3にとどまるもの(sm1癌),中1/3までにとどまるもの(sm2癌)そして深層1/3に到達したもの(sm3癌)に分けて研究が行われた5).この結果,m癌のうちでリンパ節転移を有するものは深達度がm3のものであり,その頻度はm3癌の約10%程度であることが判明し,同時にsm癌の中にも深達度によりリンパ節転移頻度に差があることもわかり,sm1 15%,sm2 40%,sm3 50%程度であると報告された6)~8).折しも内視鏡的粘膜切除法の確立があり,m3・sm1癌の診断や取り扱いに注目が集まるようになったのである.
食道表在癌とは,癌の浸潤が粘膜下層までにとどまるものを言う1)が,症例数の増加とともに,その研究は目覚ましく変化した.なかでも表在癌を粘膜癌(以下m癌)と粘膜下層癌(以下sm癌)の2群に区別して考える必要が生じたことはよく知られている.その理由は,m癌とsm癌とが病理組織学的に異なった特徴を持っていることに起因するが,この特徴を利用した治療の成立が,臨床面でも両者の鑑別を正確にすることを要求している.m癌にはリンパ節転移がまれで,治療に際して局所の根治性だけを問題にすればよいのに対して,sm癌は平均40%前後の頻度でリンパ節転移を伴うため,局所とともに転移リンパ節を考慮した治療法が必要であるからである2).その後m癌の一部にもリンパ節転移が存在することが判明し,その実態を解明する必要が生じた3)4).このために,表在癌の深達度を亜分類してm癌を上皮内癌(m1癌),粘膜固有層癌(m2癌)ならびに粘膜筋層に浸潤した癌(m3癌)に細分類し,同時にsm癌の浸潤が表層1/3にとどまるもの(sm1癌),中1/3までにとどまるもの(sm2癌)そして深層1/3に到達したもの(sm3癌)に分けて研究が行われた5).この結果,m癌のうちでリンパ節転移を有するものは深達度がm3のものであり,その頻度はm3癌の約10%程度であることが判明し,同時にsm癌の中にも深達度によりリンパ節転移頻度に差があることもわかり,sm1 15%,sm2 40%,sm3 50%程度であると報告された6)~8).折しも内視鏡的粘膜切除法の確立があり,m3・sm1癌の診断や取り扱いに注目が集まるようになったのである.
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