症例検討
Ⅱ型早期大腸癌肉眼分類の問題点
著者:
味岡洋一
,
大倉康男
,
工藤進英
,
小林広幸
,
田中信治
,
津田純郎
,
鶴田修
,
平田一郎
,
藤井隆弘
,
松田圭二
,
松永厚生
,
八尾隆史
,
渡二郎
,
渕上忠彦
ページ範囲:P.29 - P.70
5mm以下の表面型大腸腫瘍は,隆起型と陥凹型に分けるとの大方のコンセンサスが得られている1).しかしながら,更に大きな病変になるとsmに浸潤するにつれて形態変化を来すため,その時点で表現されている肉眼分類とするのか,大腸癌の発育・進展を考慮した肉眼分類にするのか,また深達度を想定できる肉眼分類にするのか,などで混乱が生じている.また,m内にとどまる病変でも陥凹周囲の反応性隆起の取り扱いが異なり,腫瘍の計測法にも問題が生じている.
今回は,大腸癌の発育・進展を含めた診断学に積極的に取り組んでいる比較的若手の13名の研究者に各自の肉眼分類の診断基準を示してもらい,実際の症例の読影を通じてその相違点を明らかにし,胃の肉眼分類を踏襲するのか,大腸癌独自の肉眼分類が必要なのか,肉眼分類統一への道を探ることを目的として本号が企画された.提示された症例(Ⅰpは除外)は診断者の施設から肉眼分類に必要と思われる写真を特に枚数の制限を設けず提出してもらっており,著しく枚数の多い症例を除きそのまま提示してある.また,診断にあたっては,あくまでも肉眼分類であるとの判断で,ルーペ像,プレパラートまでは準備したが,病理の先生方にはお気の毒であったがあえて顕微鏡は準備しなかった.また,切除標本上での腫瘍の範囲は誌面では示してあるが,症例の診断時には示していなかった.なお,肉眼型の判定は,内視鏡,あればX線,切除標本,ルーペ像でそれぞれ判定し,それらをまとめ総合診断としてある.症例は,純粋な陥凹型に近いものから隆起の様相が強くなっていく型へと診断者の数の多かった順番に並べてある.