今月の主題 胃MALTリンパ腫―Helicobacter pylori除菌後の経過
主題
Helicobacter pylori除菌療法による胃MALTリンパ腫の形態変化―内視鏡・X線・病理組織所見の変化について
著者:
中村常哉1
中村栄男2
鈴木隆史1
横井太紀雄3
松浦昭1
大橋計彦1
所属機関:
1愛知県がんセンター消化器内科
2愛知県がんセンター臨床検査部病理
3愛知医科大学病理部
ページ範囲:P.1353 - P.1366
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要旨 胃MALTリンパ腫37例中,Helicobacter pyloriは33例で陽性,4例で陰性と判定された.陽性例全例に除菌療法を施行し31例で除菌に成功,その転帰はCR 11例・PR 17例・NC 3例であった.胃MALTリンパ腫の肉眼所見を内視鏡所見6つ(潰瘍・びらん・cobblestone粘膜・褪色調粘膜・早期胃癌類似病変・粘膜下腫瘤様隆起)に分類した.CR例,PR例とも肉眼所見の多くは1~3か月で萎縮粘膜所見として改善し,その所見は以後長期にわたって持続した.特に胃底腺領域では斑状萎縮粘膜として残存した.その組織所見は,腫瘍細胞が減少・消失し固有胃腺は萎縮して粘膜固有層は空虚となっていた.cobblestone粘膜はPR例のみにみられ,粘膜下腫瘤様隆起はNC例に多くみられた.粘膜下腫瘤様隆起は除菌治療に反応しにくいものと考えられる.