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今月の主題 胃癌診断における生検の現状と問題点 序説
胃癌診断における生検の現状と問題点
著者: 今村哲理1
所属機関: 1札幌厚生病院胃腸科
ページ範囲:P.1467 - P.1468
文献購入ページに移動 近年,わが国における内視鏡下冑生検は,胃生検そのものがルーチン検査となってあまねく行われるようになって久しい.この生検という行為の“ルーチン化”はともすれば視覚~思考過程の合理化・短絡化を招来せしめ,“胃癌診断=胃生検診断という誤謬”を生み出したのではなかろうか?かつて早期胃癌診断の黎明期に内視鏡直視下生検がいまだ困難な時代の先達たちは,X線あるいは内視鏡を通した肉眼視のみを手段とし今日の胃癌診断の基礎を築いた.この肉眼所見への傾注こそが,今日の胃癌診断の確立を導いたと言っても過言ではあるまい.すなわち,肉眼所見にいかに忠実な写真を撮り,どのように所見を拾い解釈するかに心血を注いできたのである.
1960年代半ばから直視下胃生検が導入されたことにより,胃癌の早期診断は飛躍的に向上した.このことについての胃生検の果たしてきた功績は大である.しかし,一方においては生検に頼りすぎ,十分な所見の読み(=思考)の欠落した短絡的な生検が流布され蔓延してはいまいか? 確かに消化管の形態診断学は地道な努力の積み重ねや経験を要し,時代の流れと研究・診療環境の変遷とともに,特に若い先生方にとって取っつき難い学問のイメージを抱かせている面があり,手っ取り早い生検で決着をつければよいとする風潮があることは否めないであろう.
1960年代半ばから直視下胃生検が導入されたことにより,胃癌の早期診断は飛躍的に向上した.このことについての胃生検の果たしてきた功績は大である.しかし,一方においては生検に頼りすぎ,十分な所見の読み(=思考)の欠落した短絡的な生検が流布され蔓延してはいまいか? 確かに消化管の形態診断学は地道な努力の積み重ねや経験を要し,時代の流れと研究・診療環境の変遷とともに,特に若い先生方にとって取っつき難い学問のイメージを抱かせている面があり,手っ取り早い生検で決着をつければよいとする風潮があることは否めないであろう.
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