今月の主題 胃癌診断における生検の現状と問題点
主題
胃癌診断における生検診断の現状と問題点
著者:
八尾隆史1
三浦修2
川野豊一2
松崎圭祐2
松本主之3
壁村哲平4
丸岡彰5
吉田道夫6
岩井啓一郎1
小柳三由紀1
恒吉正澄1
所属機関:
1九州大学大学院医学研究科形態機能病理
2防府消化器病センター
3九州大学医学部附属病院光学医療診療部
4済生会福岡総合病院内科
5福岡市民病院内科
6宗像医師会病院放射線科
ページ範囲:P.1469 - P.1475
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要旨 胃内視鏡が施行され生検が行われた症例の内視鏡像を,G1:良性にしか見えない,G2:癌(悪性)を否定しえない,G3:癌か良性かはっきりしないがおそらく腫瘍(腺腫に相当),G4:癌(悪性)を積極的に疑う,G5:癌(悪性)にしか見えない,の5段階に分類し,生検組織像との対比を行い胃癌診断における生検の役割を検討した.対象症例737例中G1が413例,G2が256例,G3が18例,G4が21例,G5が29例であった.各群での癌検出率は,G1が0.2%,G2が1.6%,G3が11.1%,G4が66.7%,G5が100%であった.また,内視鏡像と組織像の一致率は95.8%であった.内視鏡で癌と判定(G4, 5)されたが生検では良性であった症例は7例(全体の0.9%)で,逆に内視鏡で良性(G1, 2)と判定されたが生検で癖であった症例は5例(全体の0.7%)であった.現状では内視鏡的に良悪性の鑑別がかなり可能であるが,良性と判定している症例にもかなりの数の生検が施行されている.そして,肉眼的に悪性の所見が乏しい癌や悪性様所見を呈する良性病変も少なからず存在するので,確定診断においては生検が重要な役割を果たしている.