今月の主題 胃癌診断における生検の現状と問題点
主題
胃生検診断の現状と問題点―内視鏡・生検診断後のX線診断の役割
著者:
中野浩1
長坂光夫1
松浦良徳1
岩田正己1
水田知佐1
三沢美帆1
伊東逸朗1
斉藤知規1
外間政希1
宇野浩之1
野村知抄1
神谷雅人1
保原怜子1
西井雅俊1
高濱和也1
渡邊真1
宮川秀一2
黒田誠3
所属機関:
1藤田保健衛生大学消化器内科
2藤田保健衛生大学消化器外科
3藤田保健衛生大学病理科
ページ範囲:P.1505 - P.1511
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要旨 今日,胃生検診断の手技,診断能については全く問題なく,どのような所見を生検すべきかについても,少しでも異常と見えるとすぐ生検するようになったので検討する課題は少ない.むしろ,あまり予想しなかった部位から生検で癌と診断された後の診断過程に問題があると考えるので,症例を挙げ診断上の問題点について述べる.〔症例1〕は胃体上部前壁の発赤を帯びた粘膜から生検がなされ印環細胞癌と診断された.境界の追える局在病変を胃内視鏡・X線検査で認めずⅡb型早期胃癌と診断したが,手術直前にX線フィルムを見直したところ壁の伸展不良に気づきlinitis plastica型癌と診断した.〔症例2〕は胃体部前壁の急性胃粘膜病変と考えられる粘膜からの生検で癌と診断された.X線診断では1枚のフィルムで表層拡大型胃癌の全貌を表すことができた.〔症例3〕は胃体下部小彎に潰瘍を認め,周囲からの生検で癌と診断された.X線診断は噴門部まで拡がるⅡc+Ⅲ型早期胃癌であった.口側切除線の決定にX線診断は有用であった.このように胃X線診断は内視鏡・生検診断後にも全体像を表すといった点で,依然として大きな意義を持っている.