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文献詳細

雑誌文献

胃と腸34巻12号

1999年11月発行

今月の主題 胃癌診断における生検の現状と問題点

主題症例

画像上癌と考えられたが生検陰性であった進行胃癌の1例

著者: 垂水研一1 飯田三雄1 古賀秀樹1 松本主之1 末兼浩史1 黒木文敏1 武田昌治1 小堀陽一郎1 松本啓志1 星加和徳1 角田司2 三上芳喜3

所属機関: 1川崎医科大学消化器内科Ⅱ 2川崎医科大学消化器外科 3川崎医科大学病理

ページ範囲:P.1541 - P.1547

文献概要

要旨 患者は55歳,男性.1991年の近医での上部消化管内視鏡検査にて幽門前庭部後壁に潰瘍性病変を指摘され,以後内服治療を受けるが改善せず難治性であった.同院にて約6年間で数回の上部消化管内視鏡検査を受けたが,生検で悪性所見がみられず経過観察となっていた.1997年7月心窩部痛が出現したため精査・加療目的にて当科に紹介入院となった.上部消化管X線検査で,幽門前庭部後壁に立ち上がり明瞭な透亮像を認め,中心には巨大なニッシェを伴い,その辺縁の一部に不整な浅い陥凹が描出された.上部消化管内視鏡検査では,深い潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様病変として観察されたが,潰瘍辺縁の一部には不整な陥凹を認めた.超音波内視鏡検査では不均一なやや高エコーの腫瘤が第4層まで塊状に浸潤していた.以上の画像所見から,粘膜下腫瘍様発育を呈した進行胃癌を疑い繰り返し生検を施行したが,癌の確診が得られなかった.主病変対側にはⅡc+Ⅱa型早期胃癌を合併しており,遠位側胃切除術を行った.切除標本では,主病変は3.7×3.5×3.3cmで,著明な粘液結節から成る腺癌が粘膜下腫瘍様に発育し,深達度se,INFβ,ly0,v0の膠様腺癌と診断した.主病変対側のⅡc+Ⅱa型病変は深達度sm1の高分化型管状腺癌であり,両病変の間には病理組織学的に連続性は確認されず多発胃癌と診断した.膠様腺癌を念頭に置いた詳細な臨床・病理学的評価を進めることが必要である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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