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文献詳細

雑誌文献

胃と腸34巻4号

1999年03月発行

文献概要

今月の主題 胃型の分化型胃癌―病理診断とその特徴 主題

胃型ならびに腸型分化型腺癌の遺伝子変化

著者: 遠藤泰志1 田村元1 坂田謙1 大村清成1 渡辺英伸2 本山悌一1

所属機関: 1山形大学医学部病理学第2講座 2新潟大学医学部第1病理

ページ範囲:P.539 - P.544

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要旨 胃分化型腺癌を細胞形質で,①極めてよく胃腺窩上皮型の細胞形質を有する群,②極めてよく完全型腸上皮化生型の細胞形質を有する群,そして③通常型の分化型腺癌群,に分類し,各群におけるp53,APC,K-ras遺伝子変異およびmicrosatellite instabihty(MSI)の頻度を検索した.p53遺伝子変異率は①群で5%(1/22),②群で31%(4/13),③群で18%(3/17)であった.APC遺伝子変異は①群で9%(2/22),③群で6%(1/17)認められた.K-ras遺伝子変異は3群のいずれにも検出されなかった.一方,MSIは①群で45%(10/22),②群で0%,③群で24%(4/17)と,①群と②群とでは極めて対照的な結果であった(p<0.01).以上の結果から,胃分化型腺癌の遺伝子的発生経路はその細胞形質によって大きく異なっており,腺窩上皮型分化型腺癌ではMSIの関与が大きく(mutator pathway),完全型腸上皮化生型分化型腺癌ではp53遺伝子の関与が大きいこと(suppressor pathway)が示唆された.これらの結果は胃分化型腺癌の組織発生の多様性を反映しているものと思われた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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