主題
大腸腫瘍内視鏡的治療後の局所遺残再発―腺腫・m癌を中心に
著者:
小林広幸
,
渕上忠彦
,
堺勇二
,
小田秀也
,
菊池陽介
,
長村俊志
,
竹村聡
,
石川伸久
,
宮本竜一
,
森山智彦
,
和田陽子
,
中西護
ページ範囲:P.597 - P.610
要旨 内視鏡的に切除された大腸腺腫2,720病変と粘膜内(m)癌264病変のうち,6か月以上経過が観察されていたものは腺腫1,387病変(経過観察率51.0%)とm癌193病変(経過観察率73.1%)の計1,580病変であった.このうち切除時の内視鏡所見から初回治療が肉眼的に不完全切除と判断される14病変を除いた1,566病変(腺腫1,382病変,m癌184病変)を対象として,内視鏡切除後の局所遺残再発について検討した.遺残再発は腺腫4病変(0.3%),m癌7病変(3.8%)の計11病変(0.7%)に認められた.遺残再発例の肉眼型は,Ⅰs2病変,Ⅱa3病変,結節集簇様病変6病変で,Ⅰp型と陥凹を伴う表面型腫瘍には遺残再発はみられなかった.遺残再発例は全大腸に分布していたが,遺残再発率は直腸と盲腸において高かった.また,大きさ別にみた遺残再発率は30mm以上と30mm未満の病変との間に有意差が認められた(25.0%vs0.3%;p<0.001).更に,初回治療が3分割以上と2分割以下の病変での遺残再発率にも有意差が認められた(20.8%vs0.4%;p<0.001).以上から,腺腫,m癌における内視鏡的切除の適応は,大きさ30mm程度までの病変で,それ以上の病変は相対的適応とすべきであり,3分割以上となった病変ではその後の注意深い経過観察が必要である.初回経過観察は,遺残再発確認までの期間からみて,治療後6か月から1年以内に行い,少なくとも3年間程度は毎年経過観察が必要と考えられた.