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書評「肝癌の低侵襲治療」
著者: 門田守人1
所属機関: 1大阪大学医学部・第2外科
ページ範囲:P.800 - P.800
文献購入ページに移動 わが国のがん治療,特に消化器癌の領域では欧米に類をみないような拡大手術が行われてきた歴史がある.そして,治療後の5年生存率も着実に延びてきている.更に近年では,この生存率と同時に患者さんのQOLを重視する傾向が強くなってきている.筆者はわが国のがん治療は二極化に入っていると思っている.すなわち,いまだに満足できる治療成績が得られていないがんに対しては,侵襲を意識せず根治性を求める積極的な治療法の開発と,逆に治療成績が向上しているがんについては治療効果を損なうことなく,できる限り侵襲を押さえようとする低侵襲治療の開発の二極化である.外科手術における縮小手術,消化管内視鏡を用いた粘膜切除,更には腹腔鏡下手術などの症例数が飛躍的に廷びていることも周知の事実である.
一方,わが国の肝細胞癌のほとんどは肝硬変あるいは慢性肝炎など基礎疾患を有する肝臓から発生するため,切除術は肝機能の面から大きく制約を受けている.また,C型肝炎による肝硬変では肝の障害が進むほどがんの発生率が高くなり,肝臓に対する影響を極力抑制し,治療することが必要となる.そこで,最近では肝細胞癌に対していくつもの低侵襲性の治療法が開発され,各施設で試みられている.この度,医学書院から発刊された「肝癌の低侵襲治療」は,早い時期よりinterventional radiologyに積極的に取り組まれてきた中村仁信教授と肝臓内科の第一人者の1人である林紀夫教授の編集によるものである.前述のごとく,非常に時宜を得た企画である.その特色は,まず肝臓病学の立場から肝細胞癌の特徴をわかりやすく紹介し,それぞれの癌腫に適した治療法のあり方を説明していることと,個々の治療法の詳細を非常にわかりやすく解説していることであろう.更に症例の写真や図を多用し,読者の理解を助けていることも1つの特徴であろう.また,検査・治療の合併症や再発に対する診断・治療など,最近問題になることの多いテーマについても詳しく述べられている.
一方,わが国の肝細胞癌のほとんどは肝硬変あるいは慢性肝炎など基礎疾患を有する肝臓から発生するため,切除術は肝機能の面から大きく制約を受けている.また,C型肝炎による肝硬変では肝の障害が進むほどがんの発生率が高くなり,肝臓に対する影響を極力抑制し,治療することが必要となる.そこで,最近では肝細胞癌に対していくつもの低侵襲性の治療法が開発され,各施設で試みられている.この度,医学書院から発刊された「肝癌の低侵襲治療」は,早い時期よりinterventional radiologyに積極的に取り組まれてきた中村仁信教授と肝臓内科の第一人者の1人である林紀夫教授の編集によるものである.前述のごとく,非常に時宜を得た企画である.その特色は,まず肝臓病学の立場から肝細胞癌の特徴をわかりやすく紹介し,それぞれの癌腫に適した治療法のあり方を説明していることと,個々の治療法の詳細を非常にわかりやすく解説していることであろう.更に症例の写真や図を多用し,読者の理解を助けていることも1つの特徴であろう.また,検査・治療の合併症や再発に対する診断・治療など,最近問題になることの多いテーマについても詳しく述べられている.
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