今月の主題 AIDSとATLの消化管病変
主題
HTLV-1と消化管病変
著者:
蓮井和久1
佐藤榮一1
東美智代1
高城千彰1
末吉和宣2
中村敬夫3
田中貞夫4
所属機関:
1鹿児島大学医学部病理学第2
2鹿児島市立病院病理研究検査室
3鹿児島予防医学研究所病理
4鹿児島市医師会病院病理
ページ範囲:P.873 - P.881
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要旨 HTLV-1(human T-cell leukemia virus type1)関連疾患には,腫瘍性のATLL(adult T-cell leukemia/lymphoma)や非腫瘍性のHAM(HTLV-1-associated myelopathy)などがあるが,消化管病変が検索されているのはATLLでのみである.HTLV-1感染についての臨床情報があれば,ATLLの消化管病変の病理診断は難しいものではないが,免疫染色のほかに,切片から抽出したDNAでのPCR(polymerase chain reaction)解析が必要な例もある.ATLLの剖検例における消化管病変の多くは,多臓器浸潤の部分病変と考えられる.HTLV-1キャリアーにおける消化管病変の生検で,消化管原発のATLLの存在とintermediate stateでの消化管病変の有無はいまだ明らかにされていない.HTLV-1キャリアーの消化管病変の検索では,病変でのHTLV-1感染細胞の免疫組織学的検出や,HTLV-1 p40Tax(Tax)やTaxの影響で誘導される細胞周期調節転写因子E2Fの検索が今後必要になると思われる.Wotherspoonらは,immunocompromised hostにおける胃リンパ腫の研究で,高悪性度MALTリンパ腫(mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma)ではEpstein-Barr virusの関係した症例が認められると報告している.したがって,今後,HTLV-1キャリアーにおけるMALTリンパ腫の発病に,HTLV-1感染によるimmunocompromised hostとしての免疫学的微小環境が影響しているか否かを検索する必要があると考えられる.