文献詳細
文献概要
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書評「大腸疾患のX線・内視鏡診断と臨床病理」
著者: 長廻紘1
所属機関: 1群馬県立がんセンター
ページ範囲:P.24 - P.24
文献購入ページに移動 日本の大腸病学はほとんどゼロからのスタートでしたが,今ではいくつかの分野で世界のトップクラスにあると言っても過言ではありません.大腸疾患の質的・量的な増加がその根底にありますが,この急速な進歩は,推進者たちの構想力・努力があって初めて可能でした,この度上梓された「大腸疾患のX線・内視鏡診断と臨床病理」の編集者である武藤徹一郎氏(癌研究会附属病院)は評者の最も尊敬する同学の先輩であり,多田正大氏(京都がん協会)は,最も刺激を受け続けてきた同学の後輩です.この両氏こそは日本の大腸病学の強力な推進者であり続けた固有名詞と言っても過言ではありません.本書が取り扱うX線・内視鏡診断,臨床病理こそは,東西,内科系外科系を代表する両氏が特に得意とされる分野で,その薫陶を受けた共同編集者名川弘一,清水誠治の両氏とともにその学派の俊英を総動員した,最適のグループによってなされた,との感を深くします.中国清朝の歴史学者,章学誠に「六経皆史」という説があります.中国の古典である六経(詩経,易経など)はすべて歴史の一種であるとの考えです.医学に携わる者にとって,日常行うすべてのことは医学に連なる,大腸を業とするものはすべてが大腸ひいては医学に関係するとするのは,章学誠の説をあながち曲解したことにはならないでしょう.両氏ならびに学派の方々の日常からはそのような気構えがうかがわれます.
日本の大腸病学はとても若い学問ですが,せっかくここまで来たのですから,これからも同学の士が増え,進歩を続けていくことが望まれます.そして,今後も増え続けると予想される大腸癌,ポリープ,IBDなどの解明,診断,治療に立ち向かっていただかなければなりません.そういった人たちを引きつけ,情熱をかきたてさせるに価するバランスのとれた成書が,残念ながらありませんでした.まさに,待望久しかった書の出現と言っていいと思います.
日本の大腸病学はとても若い学問ですが,せっかくここまで来たのですから,これからも同学の士が増え,進歩を続けていくことが望まれます.そして,今後も増え続けると予想される大腸癌,ポリープ,IBDなどの解明,診断,治療に立ち向かっていただかなければなりません.そういった人たちを引きつけ,情熱をかきたてさせるに価するバランスのとれた成書が,残念ながらありませんでした.まさに,待望久しかった書の出現と言っていいと思います.
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