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文献詳細

雑誌文献

胃と腸35巻1号

2000年01月発行

文献概要

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書評「炎症性腸疾患―潰瘍性大腸炎とCrohn病のすべて」

著者: 千葉勉1

所属機関: 1京都大学大学院医学研究科・臨床器官病態学/消化器病態学

ページ範囲:P.110 - P.110

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 本書を読ませていただいて,これはまさしく現時点でのわが国における炎症性腸疾患のバイブルだと思った.実際本書は,ただ単にすべてを網羅しているというのではなくて,かゆいところに手が届くと言うか,本当に皆が知りたいところを明快に教えてくれる,といった内容になっている.そして,それは極めて適切に,またわかりやすく基礎研究から得られた知識が紹介されていること,また一方,臨床においては病理,内科,外科といったあらゆる方面から,より集学的な観点に立って,診断,治療が語られている,という2点によって大きく特徴づけられている.

 本書の読者は大半が消化器病臨床の専門医と考えられるが,私たち臨床医にとっては,臨床の場における診断と治療が最も大切であることは言うまでもない.しかしそれらの質を向上させ,特に新しい,かつ優れた方法を臨床医学に導入していくためには,疫学や,免疫学を中心とした基礎研究から得られた最新の知識をより早く,より貧欲に吸収することが必須である.特に現在のように,基礎医学の進歩が著しい時代にあっては,臨床医といえどもそうした基礎的知識の修得は今や不可欠である.例えば,最近のノックアウト・マウスやトランスジェニック・マウスを用いた研究から明らかになってきたことは,T細胞系の免疫反応の回路の・部を変化させてやれば,容易に炎症性腸疾患類似の病変が作製できるという事実であるが,このことは炎症性腸疾患の病因を解明するきっかけを得る意味で,またそれを元に予防や治療法を考えていく意味で重要である.更に,一方臨床の場では抗TNFα抗体が極めて有効であることが明らかとなったが,このように臨床側からも病因論に迫れるようになってきた.本書はこのような最新の情報に基盤をおいた基礎と臨床の対話を,どちらかと言えば臨床家の立場に立って論じていると言えよう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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