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文献詳細

雑誌文献

胃と腸35巻10号

2000年09月発行

文献概要

今月の主題 食道アカラシア 序説

食道アカラシア

著者: 吉田操1

所属機関: 1東京都立駒込病院外科

ページ範囲:P.1231 - P.1232

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 はじめに

 食道アカラシアは原因不明の食道疾患で,食道筋層の運動能力の欠如,下部食道噴門の弛緩不全を主徴とするものである1).組織学的には,Auerbach神経叢の変性が著明である.その原因は不明なものが多く,特発性のものが大部分であるが,このほかに家族内に多発するもの,パーキンソン病などのような神経の変性に起因する疾患に伴うものなどがある.通過障害の結果,食物は常に食道内に鬱滞,食道は著明に拡張し,筋層は肥厚する.中でも下部食道の筋層の肥厚が顕著である.食道の粘膜もこれらの影響を受け,炎症を生じ,粘膜上皮の反応性の角化や肥厚を伴う.

 食道アカラシア症例の発生頻度は,100,000人当たり0.4~1.1人と言われている2).症状は,罹病期間によって決まる.20~40歳に発症し3),固形物の通過障害は代表的な愁訴であるが,逆流,胸焼け,胸痛もしばしば伴う.このような症状があっても食道アカラシアと診断されるまでに4~5年を要するものが多いとされる.胃食道逆流症などと誤診されるためである4).通過障害は固形物にはじまるが,次第に流動物の通過も不良になる.食物の摂取に伴う胸部の鬱帯感,重圧感は時とともに進行する.このため食事の摂取量に限界を生じ,患者の体重は低値を呈する.食道アカラシアに生じる合併症としては,拡張した食道による縦隔内臓器の圧排症状,食道の潰瘍あるいは穿孔や誤嚥性肺炎である。就寝中や早朝に逆流を生じ,未消化の食物や白色の泡沫状の唾液の逆流をみる.夜間に咳込み覚醒することも食道アカラシアに特徴的な症状である.これを避けるために,食道内に停滞する内容物を意識的に嘔吐してから就寝する習慣をもつ患者も少なくない.胸骨後部の痛みはしばしばあり,若年者に多い5).体重の減少は食道アカラシアの重症度をよく表しており,有効な治療後は明らかに体重の増加がみられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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