今月の主題 炎症性腸疾患における生検の役割
主題
潰瘍性大腸炎の癌・dysplasiaのサーベイランスにおける生検の役割―特に隆起型dysplasiaの生検の諸問題について
著者:
横山正1
横山泰久1
菊池学1
野浪敏明1
大城宏之2
伊藤治2
横山功2
長与健夫3
篠崎大4
渡辺聡明4
名川弘一4
武藤徹一郎5
所属機関:
1横山胃腸科病院外科
2横山胃腸科病院内科
3横山胃腸科病院病理
4東京大学医学部腫瘍外科
5癌研究会付属病院外科
ページ範囲:P.173 - P.180
文献購入ページに移動
要旨 潰瘍性大腸炎の癌・dysplasiaのサーベイランスにおける隆起型のdysplasia(DALM)の生検の役割・問題点を述べた.小さなDALMを含めれば,われわれのグループでのDukes AおよびBの浸潤癌には全例DALMを伴っていた.小さなDALMは,腺腫との鑑別が必要であるが,隆起の周囲粘膜からの生検で異型上皮を認めない場合,腺腫として内視鏡的切除し経過観察する適応があると考えられた.一方,比較的大きな隆起性病変で上皮表層には異型を認めず,深部に異型腺管や浸潤癌を認める症例もあり,生検診断の盲点と考えられた.平坦型dysplasiaの存在は十二分に心すべきだが,平坦粘膜からのランダムな生検の真の有用性はコストベネフィットなどの点では現時点でも評価不能であり,多様な形態を示す潰瘍性大腸炎合併腫瘍を念頭に置き,より小さなDALMにも注意して生検採取部位を選ぶ必要があると思われる.