文献詳細
文献概要
今月の主題 食道癌の発育進展―初期病巣から粘膜下層癌へ 序説
食道癌の発育進展―初期病巣から粘膜下(層)癌へ至るまで
著者: 渡辺英伸1
所属機関: 1新潟大学医学部第1病理
ページ範囲:P.493 - P.494
文献購入ページに移動 食道上皮内に発生した初期病巣の食道癌が粘膜下癌へ発育進展する場合に,各深達度に応じてどのような肉眼形態をとり,それぞれの肉眼形態に達するまでの発育速度はどれくらいであろうか.これら時間的因子と深達度とを組み合わせた食道癌の肉眼形態変化はどのような因子に支配されているのであろうか.これらは学問的に大変興味ある課題であるばかりでなく,その課題に対する解答は食道癌の臨床診断・治療を含む臨床的取り扱い,更に病理診断にも非常に役立つであろう.これら課題への挑戦を試みたのが本号である.
世界的にみると,食道癌の初期病変である上皮内癌(日本の組織診断基準による)は多くの場合,欧米では異形成(dysplasia)と呼ばれている1)~3).本号では多くの論文が日本の組織診断基準に沿って書かれているものと推定される4)~6).さて,食道癌の初期病変とはどのようなものであろうか.病変の形態変化を追求する本誌の基本姿勢からすると,"臨床的に捉えられる小病変までを含む"と定義したほうがよかろう.個人的には,大きさ5mm以下の0-IIb型上皮内癌(m1癌,carcinoma in situ)で,細胞異型度の低い癌(低異型度癌)と定義するのが妥当ではあるまいか.低異型度癌とした理由は,ほとんどの食道癌は,まず細胞異型度の低い癌(細胞分化を示す癌で,欧米のlowgrade dysplasia,ないしmild to moderate dysplasiaに相当)として発生するからである.
世界的にみると,食道癌の初期病変である上皮内癌(日本の組織診断基準による)は多くの場合,欧米では異形成(dysplasia)と呼ばれている1)~3).本号では多くの論文が日本の組織診断基準に沿って書かれているものと推定される4)~6).さて,食道癌の初期病変とはどのようなものであろうか.病変の形態変化を追求する本誌の基本姿勢からすると,"臨床的に捉えられる小病変までを含む"と定義したほうがよかろう.個人的には,大きさ5mm以下の0-IIb型上皮内癌(m1癌,carcinoma in situ)で,細胞異型度の低い癌(低異型度癌)と定義するのが妥当ではあるまいか.低異型度癌とした理由は,ほとんどの食道癌は,まず細胞異型度の低い癌(細胞分化を示す癌で,欧米のlowgrade dysplasia,ないしmild to moderate dysplasiaに相当)として発生するからである.
掲載誌情報