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文献詳細

雑誌文献

胃と腸35巻5号

2000年04月発行

文献概要

今月の主題 Helicobacter pylori除菌後の消化性潰瘍の経過―3年以上の症例を中心に 序説

Helicobacter Pylori除菌後の消化性潰瘍の経過―3年以上の症例を中心に

著者: 伊藤誠1

所属機関: 1名古屋市立大学第1内科

ページ範囲:P.617 - P.619

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はじめに

cimetidineが,わが国最初のヒスタミンH2受容体拮抗剤(H2拮抗剤)として登場したのは1982年であるが,これ以降消化性潰瘍の治療は様変わりした.H2拮抗剤は強力な胃酸分泌抑制作用によって85%前後という高い潰瘍治癒率を実現しただけでなく,食事制限と入院から患者を開放したからである.更に1991年にはproton pump inhibitor(PPI)が臨床に供用され,治癒率は更に約10%上乗せされた.したがって,組織欠損の修復という意味での潰瘍治療法は1980年代から1990年代にかけてほぼ完成したと言っても過言ではない.

 しかし,治癒した潰瘍の過半が1年以内に再発するという課題は未解決のまま残されたため,H2拮抗剤の長期半量投与,粘膜防御因子強化剤の単独もしくはH2拮抗剤との併用投与,H2拮抗剤の常用量を金曜日~日曜日の週末だけ投与するweekend therapy1)など,再発防止のための維持療法が国内外でいろいろと工夫された.このように,1980~90年代は潰瘍治療のコンセプトが組織欠損の修復から更に進んで再発のない潰瘍治療へと変化した時代でもあった.Warren2)が胃に棲息するHelicobacter Pylori(H. Pylori)に気づいた1983年という年は,潰瘍治療のコンセプトがこのように大きく変わり始めた時期であった.やがてH. pyloriの除菌が最も有効な再発防止手段であることが明らかになるわけで,この細菌の発見には潰瘍治療学にとって宿命的なものすら感じさせられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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