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文献詳細

雑誌文献

胃と腸35巻5号

2000年04月発行

文献概要

今月の主題 Helicobacter pylori除菌後の消化性潰瘍の経過―3年以上の症例を中心に 主題

Helicobacter pylori除菌後の背景胃粘膜の性状と潰瘍の再発

著者: 鎌田智有1 春間賢1 吉原正治1 田原一優2 向井俊一2 河村譲2

所属機関: 1広島大学医学部第1内科 2河村病院

ページ範囲:P.637 - P.646

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要旨 Helicobacter pylori(H. pylori)の除菌治療に成功し,3年以上経過を観察しえた胃潰瘍63例と十二指腸潰瘍65例を対象とし,除菌前後の胃粘膜の組織学的変化と潰瘍再発の頻度について検討した.炎症細胞浸潤,好中球浸潤,および表層上皮の変性は除菌治療後早期より改善し,以後胃炎のない状態が維持された.萎縮と腸上皮化生については,胃体部では除菌治療後に徐々に改善した.除菌治療成功後の潰瘍の再発は,十二指腸潰瘍では65例中1例(1.5%),胃潰瘍では63例中4例(6.3%)であり,その頻度は低率であった.潰瘍が再発した5例中4例は非ステロイド系抗炎症剤(non-steroidal anti-nflammatory drug ; NSAID)服用の既往があり,うち1例は除菌1か月後に胃潰瘍の再発を来し,酸分泌抑制剤治療に対して難治性かつ易再発性であった.潰瘍の再発を来した5例とも,除菌後に胃炎は消失した状態にあった.H. Pyloriの除菌は胃粘膜の炎症を改善し潰瘍の再発を抑制するが,背景に炎症のない状態でも潰瘍は再発し,NSAIDは除菌治療成功後の潰瘍再発における重要な危険因子と考えられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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