今月の主題 腸管の血管性病変―限局性腫瘍状病変を中心に
主題症例
小腸・大腸に多発した消化管原発血管肉腫の1例―大腸病変を中心に
著者:
田中彰一1
澤山智之1
清藤哲司1
田中盛富1
秋山陽子1
石川信1
竹本浩二1
深津裕寿1
間阪拓郎1
小坂恒徳1
永原靖浩1
永野拓也1
牧野泰裕1
山崎弘子1
上坂好一1
田中屋宏爾2
村上一郎3
吉岡敏文4
岩下明徳5
所属機関:
1国立岩国病院内科
2国立岩国病院外科
3国立岩国病院研究検査科病理
4国立福山病院内科
5福岡大学筑紫病院病理部
ページ範囲:P.831 - P.838
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要旨 患者は74歳,男性.血便を主訴に受診,注腸X線検査および大腸内視鏡検査にて下行結腸に縦走潰瘍を,上部直腸にびらんを認めた.共に生検はGroup 1で,虚血性大腸炎と診断し経過観察となった.しかし血便が続くため,約2か月後に注腸X線検査および大腸内視鏡検査を再検したところ,下行結腸病変は全周性狭窄に進展し,上部直腸病変も更に増大し発赤も強くなっていた.このときの生検もGroup 1であったが,血便が続き貧血も進行するため外科的切除を行った.術中,下行結腸,上部直腸病変以外に,空腸にも隆起性病変を認め,それぞれ局所切除した.術後の病理学的検討にて病変はすべて血管肉腫と診断された.消化管原発の血管肉腫は極めてまれであり,経過を追えたという点においても貴重な症例と考えられたので報告した.