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今月の主題 胃の“pre-linitis plastica”型癌 序説
胃のpre-linitis plastica型癌
著者: 下田忠和1
所属機関: 1国立がんセンター中央病院臨床検査部病理
ページ範囲:P.861 - P.862
文献購入ページに移動一般的にスキルス胃癌はびまん浸潤性胃癌(diffusely infiltrative cancer), linitis plastica型胃癌,Type4胃癌と同じ意味で使われている.しかし本来"スキルス"とは形容詞としての"硬い"という意味で,上記に挙げた胃癌の肉眼形態表現とは異なった事象である.それでもスキルスがあたかも独立した胃癌として,特に臨床の場で使用されているのは,この癌が広範な癌細胞の壁内浸潤と高度の線維化のために特異的な肉眼像ならびに臨床像を呈するためである.したがってスキルス胃癌はニックネームとして使用されていると考えられる.びまん浸潤性胃癌には胃体部ならびに幽門部に発生するものがある.前者は胃底腺領域に発生し,肉眼的には胃壁全体が硬化性の肥厚を来し,鉛管状あるいはleather bottle状を示す胃体部型で,中村によりlinitis plastica(LP)型胃癌と呼ばれている.一方,後者は幽門腺領域に発生し胃体部方向に浸潤すると同時に幽門狭窄を来し,幽門型とされる.したがって肉眼分類でのType4(Borrmann4型)胃癌はこれらの両者を含んだ肉眼的表現である.
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