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今月の主題 胃の“pre-linitis plastica”型癌 主題
“pre-linitis plastica”型胃癌とは
著者: 細井董三1
所属機関: 1多摩がん検診センター消化器科
ページ範囲:P.880 - P.883
文献購入ページに移動 linitis plastica型癌(以下LP型癌と略す)は集団検診や人間ドックなどで定期的に検診を受けていても,発見されたときには既に手遅れの状態のことが多い予後不良な病変であり,しかも40歳前後の若い女性に好発する傾向が強い点で社会的影響は大きく,臨床的にもその早期発見は重要な課題となっている.LP型癌の定義はさておき,その早期発見のためには,typicalLP型癌が完成する直前のlatent LP型の,更にその前の状態のpre-LP型病変に的を絞る必要がある.中村1)はpre=LP 型病変の条件として,①粘膜下組織浸潤がある,②粘膜下浸潤範囲は原発巣よりやや広い,③胃底腺領域にある,④潰瘍化がない,⑤未分化型癌,⑥2cm以下のⅡc型,⑦肉眼的に胃壁浸潤所見がみられない,などとしているが,これは将来,LP型癌になるための必要かつ十分な条件を挙げたものであろう.筆者も基本的には中村の学説を支持するものであるが,実際の臨床の場ではこのような条件を備えたsm癌に遭遇する機会は極めて少ないことや,筆者2)が収集したtypicalないしlatentLP型癌58例の原発巣の分析の結果からみると,pre-LP型病変の条件はもう少し緩めてもよいのではないかと思われる.すなわち,①の浸潤の程度は,この時点で発見されれば予後は十分に良好であることを考慮に入れると,粘膜下層だけでなく固有筋層(あるいは漿膜下層)までとしてもよい,②粘膜下浸潤範囲は原発巣より狭くても,〔症例1〕のようにある程度の線維化を伴いながらびまん性浸潤を示していればよい.④については,中村自身も述べているが,〔症例2〕のように潰瘍化があっても粘膜下層の癌浸潤が潰瘍に伴う線維化層によって完全に覆われていなければよい.⑥の原発巣の大きさは厳密に2cm以下にこだわる必要はなく,例えば2.5cm以下としても構わない.特に原発巣が噴門部や萎縮境界にかかって存在している症例では5cm前後でもよい.⑦については,〔症例3〕のように粘膜下組織浸潤を示唆する辺縁隆起や皺襞の限局性肥厚が認められてもよい.pre-LP型病変については筆者は以上のように考えている.以下に症例を呈示する.
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