今月の症例
食道内視鏡にて診断した胸部大動脈瘤食道穿破の1例
著者:
浜本哲郎1
大久保美智子1
三浦直也1
下山晶樹1
越智寛1
堀立明1
鶴原一郎1
岡淳夫2
角賢一2
浜副隆一2
所属機関:
1米子博愛病院内科
2米子博愛病院外科
ページ範囲:P.6 - P.7
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〔患者〕 65歳,男性.1997年12月に下行結腸癌(2型,stageⅢa)で左半結腸切除術を施行.外来で経過観察中に肝転移を発見され,1998年8月,肝右葉切除を行い,以後は外来で5FU(5fluorouracil)の肝動注療法を継続していた.また,1999年10月より糖尿病を発症し,経口血糖降下剤にて治療中であった.2000年2月21日,心窩部痛,食欲不振を来し,2月29日に上部消化管内視鏡検査を行うも,びらん性胃炎を認めるのみで,食道には異常を認めなかった.その後も症状が増悪するため,3月16日に入院となった.入院時には,発熱を伴い,白血球数10,200/mm3,CRP26.58mg/dlと高度な炎症所見を認めた.炎症の原因を確定しえないまま,抗生剤の点滴で経過をみていたところ,3月23日にタール便を来したため,緊急内視鏡検査を行った.
〔食道内視鏡所見〕 内視鏡を挿入すると,門歯から25cmの部位で,食道の約1/3周を占める食道壁の全層性の欠損を認め,同部位から食道内に向かって突出する暗黒赤色の拍動を伴う腫瘤を認めた(Fig.1a~c).胸部大動脈瘤の食道穿破と考え,直ちに内視鏡を抜去し,胸部CT検査を行った.