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文献詳細

雑誌文献

胃と腸36巻1号

2001年01月発行

文献概要

今月の主題 表層型胃悪性リンパ腫の鑑別診断―治療法選択のために 序説

表層型胃悪性リンパ腫の鑑別診断

著者: 吉田茂昭1

所属機関: 1国立がんセンター東病院内科

ページ範囲:P.9 - P.11

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 胃悪性リンパ腫は胃癌に比べて圧倒的に頻度が低いが,両者の肉眼所見にはかなりの類似性が見られる.このため,形態診断学の領域では当初から胃悪性リンパ腫自体の疾病論的な意味づけよりも,主として胃癌の鑑別対象(陰の部分)として,その存在意義を見いだされてきた.いわく,“胃癌を疑う所見があっても,粘膜面に光沢を有する隆起成分や決潰像などの多彩な病変が多発して見られたり,ひだ上の蚕食像が明らかでなく丸みを帯びていれば悪性リンパ腫を疑う”うんぬんである.その後,表層型を中心とする早期悪性リンパ腫症例が数多く発見され,更に微小病変の存在も明らかにされるようになると,前述の特徴的な所見の由来として,悪性リンパ腫が多中心性に発症することや,粘膜下層(まれに粘膜深層部)を発生母地とするため,粘膜表面上では健常な腺窩上皮(既存構造)を遺残しながら発育することなどの説明が病理学的な裏付けをもってなされるようになった.

 この種の鑑別診断は,潰瘍性病変の診断学が盛んに行われていた1970年代ごろから詳細に検討されるようになり,1980年代初頭に示されたいわゆる“cobblestone様所見”1)や“乳白色調の褪色所見”2)などによって,ようやく潰瘍性病変以外の範躊を含むことになり,鑑別診断として一応の完成をみたが,その後しばらくは積極的な展開が図られなかった.その背景には,“胃癌であろうが,悪性リンパ腫であろうが,どちらにしても治療は手術に回せば事足りるし,議論をするにしてもせいぜい全摘すべきか否かといったことぐらいしか残されていない”というような,診断学上の閉塞感が根底に存在していたことも事実である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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