文献詳細
消化管病理基礎講座
消化管疾患の肉眼所見に関する用語
著者: 中島寛隆1 大倉康男2
所属機関: 1東京都がん検診センター消化器科 2埼玉県立がんセンター臨床病理部
ページ範囲:P.1303 - P.1306
文献概要
陥凹型胃癌でみられる陥凹境界の凹凸不整像は,その形態が蚕に食べられた桑の葉に類似していることから,蚕食像または虫食い像と表現される.胃小区の破壊傾向が強い未分化型癌で多く認める所見で,肉眼的には蚕食像で縁取られる陥凹内部が,癌の粘膜進展範囲であるとされる.
Fig. 1は0Ⅱc,pT1(M)の印環細胞癌の切除標本肉眼像である.癌部と非癌部が接する境界線の胃小区輪郭が,蚕食像を形成している1).Fig. 2は陥凹境界部の組織像である.陥凹部では,印環細胞癌が粘膜表面に露出し,正常の粘膜構造が破壊されている.一方,非癌部分には腺窩上皮,胃底腺で構成される正常粘膜構造が認められる.このため,癌部と非癌部の間には粘膜面に高低差が生じ,陥凹境界が形成される.組織学的には,印環細胞癌は段差の境界よりわずかに広く進展している.しかし癌細胞が腺頸部で広がり,腺窩上皮の破壊がみられないために,肉眼的には蚕食像で形成される陥凹境界線が,癌の粘膜内進展の境界であると認識される.
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