文献詳細
今月の主題 早期胃癌診療の実態と問題点
序説
文献概要
「胃と腸」を創った先達は早期胃癌を血眼になって見つけ出し,その形態的概念を消化管学に植え付け,早期胃癌は治癒する癌であることを日本国中に浸透させた.積み重ねられた診断と治療に関する業績は膨大である.この軌跡は,本誌33巻1号(1998年)『「胃と腸」33年間の歩みからみた早期胃癌-診断と治療の歩みと展望』に,芳野ら1)が余すところなく的確にまとめているので,詳細はこの文献にゆだねたい.さて,新世紀のページが開かれ,新しい診断方法や治療方法が展開されつつある今,近年の早期胃癌診療の実態はどのように変化しているのか,整理し認識することが本号の企画の狙いである.早期胃癌の拾い上げ診断の面においては,集検や検診ではX線検査に代わるペプシノーゲン法の出現があり,また病院施設ではスクリーニングがX線検査から内視鏡検査への移行という現状がある.また,EMRや腹腔鏡下切除などの縮小治療の進展により,その適応となる早期胃癌の診断と治療が中心となってきているのが実態である.したがって,日常診療において診断の質は単に早期癌の発見数ではなく治療法別にみた早期胃癌の割合がどうであるかが問われるだろう.このような観点から,現時点でのX線検査,内視鏡検査の実際の発見成績はどうであるのか,また,その所見はいかなるものであるのかにも注目したい.
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