文献詳細
文献概要
今月の主題 Crohn病診断基準の問題点 序説
Crohn病診断基準をふり返って
著者: 武藤徹一郎1
所属機関: 1癌研究会附属病院
ページ範囲:P.125 - P.126
文献購入ページに移動 新しいCrohn病診断基準(案)が作成されたのは1995年であるが,本誌で取り上げられたのは1996年3月であるから5年ぶりの再登場ということになる.更にその前の基準提案が今から25年前であったことを考えると,今回は随分早い時期に再考されたことになる.すっかり忘れてしまっていたが,前回(1996)の特集のときにも筆者が序説を書いている.その中で“将来,不都合な点が見つかれば更に改訂すればよいと思っている”と述べている.したがって今回の企画も,何か不都合な点があるか否かを検証するのが目的であると解釈してよいだろう.
前回の序説でも述べたごとく,Crohn病の診断能力はこの30年の間に飛躍的に進歩・発展した.かつてはごく一部の専門家のみが知っていた病気が,潰瘍性大腸炎ほどではないが,今や一般の臨床家でも容易に診断可能なcommon diseaseになったと言える.この間の厚生省特定疾患難病調査研究班の存在と,不備ながらも診断基準が存在したことの意義は大きく,Crohn病に対する診断能向上を啓蒙してくれたと思う.ほとんどゼロに近い情報と知識をもとに,欧米のそれを参考にして作成されたのが最初の診断基準だとすれば,その後20年間のわが国における情報と知識の蓄積に基づいて作成されたのが,1995年提案の第2の診断基準であるから,その内容と質には自ずと差があるのは当然であろう.しかし,もしかすると,果たした役割は最初の不備な診断基準のほうが大きかったのではないかと思う.皆がCrohn病について無知な時代には,たとえ不備であっても診断基準は灯台の灯のごとき役割を果たしたに違いないが,Crohn病がまれな疾患でなくなった最近では,Crohn病の世の中が明るくなったようなもので,灯台の灯は明るく輝いては見えないと思われるからである.
前回の序説でも述べたごとく,Crohn病の診断能力はこの30年の間に飛躍的に進歩・発展した.かつてはごく一部の専門家のみが知っていた病気が,潰瘍性大腸炎ほどではないが,今や一般の臨床家でも容易に診断可能なcommon diseaseになったと言える.この間の厚生省特定疾患難病調査研究班の存在と,不備ながらも診断基準が存在したことの意義は大きく,Crohn病に対する診断能向上を啓蒙してくれたと思う.ほとんどゼロに近い情報と知識をもとに,欧米のそれを参考にして作成されたのが最初の診断基準だとすれば,その後20年間のわが国における情報と知識の蓄積に基づいて作成されたのが,1995年提案の第2の診断基準であるから,その内容と質には自ずと差があるのは当然であろう.しかし,もしかすると,果たした役割は最初の不備な診断基準のほうが大きかったのではないかと思う.皆がCrohn病について無知な時代には,たとえ不備であっても診断基準は灯台の灯のごとき役割を果たしたに違いないが,Crohn病がまれな疾患でなくなった最近では,Crohn病の世の中が明るくなったようなもので,灯台の灯は明るく輝いては見えないと思われるからである.
掲載誌情報