今月の主題 潰瘍性大腸炎診断基準の問題点
主題症例
大腸切除後に十二指腸病変の進展をみた潰瘍性大腸炎の1例
著者:
明星辰也1
平川克哉1
廣田千治1
城由起彦2
中村昌太郎2
壬生隆一3
岩井啓一郎4
八尾隆史4
松本主之5
所属機関:
1新日鐵八幡記念病院内科
2九州大学大学院医学研究院病態機能内科学
3九州大学大学院医学研究院腫瘍外科学
4九州大学大学院医学研究院形態機能病理学
5九州大学医学部附属病院光学医療診療部
ページ範囲:P.567 - P.573
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要旨 患者は45歳,男性.24歳時に全大腸炎型の潰瘍性大腸炎(UC)を発症した.難治性であったため,35歳時と37歳時の2回に分けて大腸切除術を受けたが,2回目の手術前に十二指腸球部から下行脚の顆粒状粘膜を指摘されていた.当院受診時,十二指腸病変はKerckring皺襞の消失と粗糙粘膜へと進展し,下行脚の狭窄とVater乳頭の機能不全を伴うまで増悪していた.生検では,粘膜固有層の密な炎症細胞浸潤と陰窩炎を伴っていた.この十二指腸病変は,プロトンポンプ阻害剤投与では不変であったがmesalazine投与後に改善した.本例の十二指腸病変は,肉眼的所見と組織学的所見がUCの大腸病変に類似していたこと,およびmesalazineが有効であったことから,UCに関連した病変と考えられた.