今月の主題 早期の食道胃接合部癌
主題
食道胃接合部癌の病理学的特徴―組織発生の面からBarrett食道癌と比較して
著者:
渡辺英伸1
田邊匡1
八木一芳2
藍原龍介1
白下英史1
味岡洋一3
橋立英樹1
西倉健3
向井玄1
藤井幹雄4
所属機関:
1新潟大学大学院医歯学総合研究科遺伝子制御講座分子・診断病理学分野
2新潟県立吉田病院内科
3新潟大学大学院医歯学総合研究科遺伝子制御講座分子・病態病理学分野
4みさと健和病院内科
ページ範囲:P.634 - P.650
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要旨 噴門部は噴門腺粘膜が存在する部と定義され,これは胃噴門部と食道噴門部とに分けられ,それぞれの長さは食道胃接合線(EGJ)から上下1cm以内にあった.本来の噴門腺粘膜はBarrett食道でも比較的によく保たれており,それより口側に伸びた食道噴門腺粘膜に腸上皮化生や癌が好発した.癌の中心が食道胃接合部(EGJ)の上下2cm以内にある噴門部癌とBarrett食道癌は粘液形質の点で近似しており,胃型優位がそれぞれ71%,88%にみられた.噴門部癌の定義はEGJの上下1cm以内に発生した癌と定義すべきであろう.腸型への変化は胃型形質低異型度癌の増殖帯で始まっていた.Barrett粘膜(食道)は“扁平上皮で覆われていた食道(表面)が円柱上皮で覆われた部分で,化生腸上皮の有無や円柱上皮粘膜の長さを問わない”と定義することを筆者は提唱したい.