今月の主題 早期大腸癌の深達度診断にEUSと拡大内視鏡は必要か
主題
早期大腸癌の深達度診断におけるEUSと拡大内視鏡の位置づけ―拡大内視鏡を重要視する立場から
著者:
藤井隆広1
加藤茂治2
斎藤豊1
神津隆弘1
松田尚久1
太田昭彦1
後藤田卓志1
小野裕之1
山口肇1
斎藤大三1
傅光義3
佐野寧3
所属機関:
1国立がんセンター中央病院内視鏡部消化器科
2加藤胃腸科内科クリニック
3国立がんセンター東病院消化器内科
ページ範囲:P.817 - P.827
文献購入ページに移動
要旨 工藤らのpit pattern分類は,組織診断とよく対応することから拡大内視鏡診断に応用されてきた.しかし,現在までの成績と治療の適応を視野に入れて考えた場合,臨床的に無処置で良い非腫瘍性病変(Ⅰ・Ⅱ型pit),内視鏡切除可能な腺腫からsm1癌(ⅢL・Ⅲs・Ⅳ型およびⅤA型の一部),外科的手術が優先されるsm2以深癌の3群に分類可能である.今回,われわれはこの大別した分類を用いて拡大内視鏡とEUSとの正診率を比較した.同一病変にEUSと拡大内視鏡の両者を施行した早期癌123病変(隆起型75,表面型48病変)における深達度診断能の比較では,肉眼型にかかわらず拡大群89%(110/123)がEUS群79%(97/123)に比べ良好な成績であった(p=0.0245).EUSで診断困難とされる腫瘍高11mm以上の隆起型腫瘍においても拡大の正診率は,86%(57/66)と良好な成績であった.早期大腸癌に対する深達度診断能は,肉眼型にかかわらず拡大内視鏡がEUSを凌駕する成績であることから,現時点では通常+拡大観察による内視鏡診断で十分と考えられる.