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文献詳細

雑誌文献

胃と腸36巻8号

2001年07月発行

今月の主題 多発食道癌

序説

多発食道癌

著者: 吉田操1

所属機関: 1東京都立駒込病院外科

ページ範囲:P.995 - P.996

文献概要

EMR時代の食道多発癌

 食道癌の中で多発するもの(以下,多発癌)がある.多発癌については興味深い点が多々あり,従来から注目されてきた.表層拡大型食道癌は,深達度が浅く面積の広い点に特徴がある.広い面積を有する癌として発生するとする意見と,複数の癌が発育・伸展の中で癒合して面積の広い病変を形成するとする説とがある.結論はついていないが,いずれにしても興味深いことである.もっと単純な多発癌については,外科切除を受けた食道癌の16%1)とも24.1%2)とも報告されている.食道癌根治手術後には頸部食道しか残らないので食道内異時性多発癌は少ない.しかし内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection;EMR)の時代となると事情が異なることがわかった.同時性多発癌はおよそ8%で予想より少なかったが,治療後の経過中に前回治療部位と異なる部位に新たな病変が発見され,その頻度は約8~12%であった2)3).早期の食道癌が進行癌までに発育するには,10年近い時間を要すること4)を考慮すると,臨床的に認識できる多発癌は,すべてが1度に明らかになるのではなく,時間の経過とともに現れて,最終的には進行癌と同じぐらいの頻度になるのであろう.このような現象を調節しているシステムは何なのか深く興味を引かれる.また話を画像診断のレベルに限っても,われわれが生活しているEMRの時代に食道多発癌がどのような影響を与えているのかを明らかにする必要がある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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