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文献詳細

雑誌文献

胃と腸37巻12号

2002年11月発行

文献概要

今月の主題 Ⅰp・Ⅰsp型大腸sm癌 序説

Ⅰp・Ⅰsp型大腸sm癌

著者: 下田忠和1

所属機関: 1国立がんセンター中央病院臨床検査部病理

ページ範囲:P.1505 - P.1506

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 早期大腸癌に対する治療戦略において,深達度診断は極めて重要である.すなわち内視鏡治療か外科治療かの選択は,その深達度診断によって決定される.近年,表面型大腸癌が多数集積され,その深達度診断は通常内視鏡のみならず,拡大内視鏡や超音波内視鏡の発達によりかなり正確に行えるようになった.しかし,Ⅰp,Ⅰspといった隆起型早期大腸癌の深達度診断には未解決の問題が多い.

 まず第一点として,この中には腫瘍性格の異なったものが含まれているためと考えられる.大腸癌の中には,粘膜内で腺腫あるいは癌が粘膜内で管腔内に上行性発育するものと,小さいうちに表面型大腸癌が粘膜下層に浸潤するものがある.この両者はいずれも肉眼的には隆起型を示すが,基本的には異なった病変で,その鑑別が極めて重要である.前者は筆者らがpolypoid growth(PG)typeと後者はnon polypoid growth(NPG)typeとしたものに相当する.この病理組織学的違いは当然肉眼所見あるいは内視鏡所見に反映される.PG typeの隆起型は,周囲粘膜とは明瞭な境界を有した立ち上がりを示し,かつ隆起表面は分葉状ないしは分葉溝を有している.また組織学的には腺腫あるいは低異型度癌で占める割合が高い.これがsm浸潤を来した例の術前診断は困難なことが多いが,組織学的には低異型度癌に高異型度癌を併存していることで,その癌がsm浸潤している可能性がある.高異型度癌になるとその表面構造の消失傾向が現れ,さらにsm浸潤した部ではびらん形成を伴うことがある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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