今月の主題 Ⅰp・Ⅰsp型大腸sm癌
主題
大腸癌研究会によるⅠp・Ⅰsp型大腸癌浸潤度判定の基準
著者:
喜多嶋和晃17
藤盛孝博1
藤井茂彦16
武田純1
知花洋子1
前田真美1
市川一仁1
大倉康男1
井村穣二1
中村哲也2
寺野彰3
尾田恭4
服部正裕4
堀内秀樹15
堀宏成15
黒田嘉和5
千葉勉6
津田富康7
所属機関:
1獨協医科大学病理学(人体分子)
2獨協医科大学光学医療センター
3獨協医科大学消化器内科
4服部胃腸科
5神戸大学大学院消化器外科学
6京都大学大学院医学研究科消化器病態学
7大分医科大学第3内科
ページ範囲:P.1507 - P.1517
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要旨 大腸sm癌浸潤度測定においては,①癌の粘膜下層への浸潤により粘膜筋板が不明瞭化あるいは消失しているため粘膜内癌部と粘膜下層浸潤部との境界線が容易に判定できない病変をどのように測定するか,②形態の異なる腫瘍のsm浸潤度をどのように測定するかという問題点が挙げられる.特にⅠp・Ⅰsp型大腸sm癌では,粘膜筋板が錯綜しているためにその同定が困難であり,さらにその形態から表面型腫瘍に比較し浸潤度が大きく測定されてしまう.大腸癌研究会sm癌プロジェクトではこれらの問題点を解決するため,浸潤度測定に際して,粘膜筋板をその状態から5つのタイプに分類し,Ⅰp・Ⅰsp型については,head invasionを考慮に入れて基準線の設定を行い,浸潤度測定の統一化を試み,多施設にて浸潤度とリンパ節転移との関連を調査中である.この測定方法に準拠して当科のⅠp・Ⅰsp型sm癌61例について浸潤度測定を行った.リンパ節転移陽性群と陰性群でsm浸潤値に有意差を認め,転移陽性群のsm浸潤最小値は1,400ymで,head invasion症例にはリンパ節転移を認めなかった.今後,多施設調査の結果をもとに有用な浸潤度測定方法を確立し,リンパ節転移との関連を明らかにする予定である.